研究課題/領域番号 |
19H02043
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 照剛 九州大学, 工学研究院, 准教授 (00334011)
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研究分担者 |
黒河 周平 九州大学, 工学研究院, 教授 (90243899)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 粒度分布 / ブラウン運動 / 回転ブラウン運動 / 並進ブラウン運動 |
研究実績の概要 |
研磨砥粒などに利用されるナノ粒子の粒度分布評価は,ナノ粒子の品質管理の観点で重要な技術であるが,ナノ粒子の観察やハンドリングの困難さがあり,その粒径計測結果の信頼性については様々な議論が行われている.研究代表者は,砥粒ナノ粒子に用いられる粒径20nm~500nmの粒子について,測定データの信頼性を確保するため,粒子個数ベースの粒度分布(幾何学径)を計測する方法として,ナノ粒子チップを用いた粒度分布評価技術を提案する.また,提案する手法は,計測に時間を有することが見込まれるため,その計測効率を改善するための検討を行う.まず,ナノ粒子分散溶媒の粘性の不確かさの影響を低減したナノ粒子の拡散係数相当径計測技術を確立し,さらにその結果を,上述の粒子個数ベースの粒度分布データを基に解析し,高効率に高い信頼性を確保した粒度分布測定が行う技術の確立を目指す. ナノ粒子粒度分布を計測する方法は,動的光散乱法,静的光散乱法,核磁気共鳴法,遠心沈降法,レーザー回折法,画像解析法などがあり,用途に応じて使い分けられているが,測定データの信頼性の高い方法では,装置の維持管理が困難だったり,測定に多大な時間がかかるなどの問題があり,装置や計測が簡便な方法では,小さな粒子を測定する場合に,測定する粒度分布情報が他の大きな粒子の影響によって誤差が生じるなどの問題があるとされ,未だにナノ粒子粒度分布を評価する標準的な手法は確立されていない. 本計画で提案する手法は,個数ベースの幾何学径粒度分布を標準化された手法で,高速に効率良く自動計測する点,また,同時に,測定サンプルの拡散係数相当径と溶媒の粘性抵抗係数を実測する点が従来の手法と異なる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り,液中におけるナノ粒子のブラウン運動の計測を行うシステムを構築している.昨年度までに作成した蛍光プローブ付きナノ粒子の並進ブラウン運動(並進拡散係数)を計測する蛍光信号検出システムを改良し,回転ブラウン運動を計測するための機能を追加を試みている.回転ブラウン運動の計測には,蛍光プローブを励起するレーザー照明を,高周波数で正弦変調する機構,および,蛍光プローブを直線偏光のビームで照明する機構を従来の並進ブラウン運動の拡散係数に追加する必要があり,本年度は,その設計と構築,試作を行った.回転ブラウン運動の計測はまだ成功していないが,装置の作成は完成しており,今後,回転ブラウン運動の計測基礎実験やその計測データの検証を行う予定である. 上記の状況から,計画はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに構築したナノ粒子のブラウン運動計測システムを用いて,ナノ粒子の並進ブラウン運動の速度および回転ブラウン運動の速度をそれぞれ示す,並進拡散係数および回転拡散係数をそれぞれ計測し,そのデータを検証した上で,並進拡散係数と回転拡散係数の同時計測を試みる. 本研究の特徴は,回転拡散係数と並進拡散係数をひとつのナノ粒子分散系に対して同時に測定できることにあり,これらのデータ取得によって,溶媒の粘性抵抗係数の平均値が算出され,ナノ粒子のブラウン運動(並進と回転)の速度が,測定できる様になると考えている.これは,単分散のナノ粒子について,ナノ粒子の移動速度の平均値からナノ粒子の体積(質量)を測定できることを意味する.計画の最終年度でもあるので,上記の計測を実施し,従来困難とされていた,熱揺動のエネルギーポテンシャルに対して,SI単位系でナノ粒子のブラウン運動を解析し,平均粒径の絶対値を正しく計測できる可能性について検討を行う予定である.
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