研究課題/領域番号 |
19H02054
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
神田 岳文 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30346449)
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研究分担者 |
山口 大介 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (00735657)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アクチュエータ / トランスデューサ / 超音波振動子 / 圧電材料 / 低温環境 |
研究実績の概要 |
極低温環境に対応した圧電アクチュエータによる小型の非磁性・非接触駆動機構を実現するために、前年度に引き続き1.極低温環境用アクチュエータの小型化を実現する予圧機構を用いた圧電振動子に関する改良・評価、2.極低温環境下でのヘリウム中での音響放射圧を利用した浮上機構の実現、3.極低温環境下でヘリウム中での音響粘性力を利用した小型の回転駆動機構の実現を目指した低温環境での駆動原理の3点について研究を行った。1.の項目については前年度に試作による原理確認を行った、材料の温度特性を利用したボルトを用いない予圧機構について、印加される予圧に関する理論式を導出した。さらに前年度に導入した低温環境評価装置(冷凍機により温度制御を行う窓付きクライオスタット)において、試作した予圧機構を用いた圧電振動子について、レーザドップラ振動計とレーザ変位計により変位・振動速度とその周波数特性について測定を行い、理論式を用いた計算の結果と実験的に得られる低温環境での振動子としての性能について比較を行い、設計手法の妥当性を示した。2.の項目については、、前年度実施した小型ボルト締め振動子による浮上実験の評価手法を改善し、低温装置内のヘリウム気体環境下での小型円板の浮上実験を行った。浮上状態については低温環境評価装置内でのレーザ変位計による光学的測定を行うことによって検証した。これにより、同装置内で液体水素あるいは液体窒素温度付近を含む温度環境で浮上状態にあることを示した。3.の項目については、低温装置内のヘリウム気体環境下での非接触回転駆動を目的とした音響粘性流生成条件を検討した。小型ボルト締め振動子の振動子としての性能から、生成される音響粘性流により得られる回転方向の推進力に関するシミュレーションを行った。これに基づき、円板の回転駆動に関する評価機構の設計・製作を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極低温環境用アクチュエータの小型化を実現する予圧機構を用いた圧電振動子に関する改良・評価の項目については、目標としていた理論式の導出とこれに基づく検証実験を行い、設計手法に関する妥当性を示すことができた。この過程では、低温環境における振動子の評価機構の構築も行っている。これらの結果の一部については、精密工学会学術講演会(2回)で発表を行っている。振動子を利用した極低温環境下でのヘリウム中での音響放射圧を利用した浮上機構の実現に関しては、低温環境評価装置内での測定系を構築することにより、同装置内で液体水素あるいは液体窒素温度付近を含む温度環境で浮上状態にあることを示すことができた。これらの内容の一部については学術シンポジウムでの発表を行った。極低温環境下でヘリウム中での音響粘性力を利用した小型の回転駆動機構の実現を目指した低温環境での駆動原理に関する項目については、ヘリウム気体環境下での音響粘性流生成条件に関し、電気機械音響系、あるいは流体に関する解析手法を検討し、回転方向の非接触推進力に関するシミュレーションを行った。これにより非接触回転機構の設計につなげることができた。本年度は評価実験については一部の評価項目が未実施となったものの、理論的検討やシミュレーション実施などの設計手法の確立に関する点については大幅に進展があり、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
極低温環境用アクチュエータの小型化を実現する新たな予圧機構を用いた圧電振動子に関しては、すでにボルトを用いない材料の温度特性を利用した予圧機構の有効性を確認しているが、さらにアクチュエータ用トランスデューサとしての性能向上を目的とした改良を行う。これまでの成果に基づき、温度依存性を考慮して理論的に導出した構造と予圧に関する式と、低温環境を想定した有限要素法シミュレーションを用いてトランスデューサ構造の改善を行う。この結果に基づいて試作した振動子についてアクチュエータ用トランスデューサとしての評価を行う。評価にあたっては冷凍機を使用した低温環境評価装置を改良して使用する。これにより本研究の課題である同構造の振動子に関する設計手法を確立する。また、振動子を利用した極低温環境下でヘリウム中での音響放射圧を利用した浮上機構の評価を行う。製作した予圧機構を持つ圧電振動子を使用し、低温装置内のヘリウム気体環境下での小型対象物の浮上実験を行う。光学的に測定される浮上距離から振動子による放射圧の値を求め、低温環境で対象物を非接触で駆動できることを示す。極低温環境下でヘリウム中での音響粘性力を利用した小型の回転駆動機構を実現に関してはこれまでに得られた非接触回転駆動を目的とした音響粘性流生成条件に関するシミュレーション結果に基づき、試作した非接触回転駆動機構について低温環境評価装置内での評価を行う。評価にあたってはレーザ光による測定装置とともに、温度環境に対応した回転数測定機構を製作して低温環境内に設置する。低温環境において測定された円板の回転に関する回転数、立ち上がり時の角加速度等のデータから、シミュレーションにより得られている駆動条件の有効性を実験的に確認する。以上により当初目的としていた極低温環境に対応した非磁性・非接触駆動機構を実現し、その設計手法を確立する。
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