研究課題/領域番号 |
19H02058
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原田 周作 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80315168)
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研究分担者 |
田中 洋介 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (80509521)
山本 恭史 関西大学, システム理工学部, 教授 (90330175)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微粒子分散系 / 濃度界面 / 混合 |
研究実績の概要 |
液体中に不均一に分散した固体微粒子が形成する見かけ上の界面 (濃度界面) の動力学的性質と,界面近傍における微粒子の混合現象に関する研究を行った.第1の目的である微粒子濃度界面の挙動解明に関して,初年度に開発した光切断法と屈折率マッチング法を併用した濃度界面の3次元形状測定システムを用いた実験を行った.同一径を有する球形粒子を充填して作製した模擬多孔質体中における微粒子懸濁液の重力沈降実験を行い,懸濁粒子の集団性や多孔質体の空隙スケールによって沈降形態がどのように変化するのかについて調べ,濃度界面位置の時間変化から沈降速度を算出した.その結果,集団性の違いにより種々のモードの沈降形態が出現し,集団性が大きい条件では濃度界面が不混和にふるまうことによって下部液体との体積置換効果に起因した3次元的な微粒子分散挙動が生じることがわかった. 第2の目的である濃度界面近傍の微粒子の混合現象に関しては,point force modelによる数値計算を実施した.上下に成層させた微粒子懸濁液の濃度界面近傍での混合挙動について,さまざまな条件で計算を行った結果,粒子の混合の有無は,上下の懸濁液の集団性の比,および沈降速度の比の両方によって説明可能であることが示された.さらに,2種類の蛍光粒子を用いた新たな粒子混合実験装置の開発に成功した.予備的な実験の結果,画像処理により濃度界面上下に存在する異種類の粒子を判別することが可能であることを確認した.今後はpoint force model による数値計算と同一条件で実験を行い,実験,数値計算結果の比較検討を行っていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の1つ目である「微粒子濃度界面の動力学的性質の解明」に関して,初年度に製作した沈降実験装置,および光切断法による3次元界面形状の測定システムを用いた実験を行った.本システムを用いて,多孔質体のような複雑な空隙形状を有する濃度界面の3次元形状の時間変化を非接触で追跡した結果,流路の空隙スケールと懸濁粒子の集団性により沈降形態や沈降速度が大きく変化することがわかった.本課題は,当初の研究計画通りに実施され,2年目は複数の学会で研究成果の発表を行った.現在は,これまでの成果をまとめ,論文執筆の準備を行っている段階である. 研究目的の2つ目である「濃度界面における微粒子混合現象の解明」に関しては,初年度に引き続いてpoint force model に基づく数値解析を広範な条件範囲で実施した.数値解析結果から,混合の程度は上下の懸濁液の集団性の比および粒子沈降速度の比の両方によって決まることがわかった.さらに,濃度界面近傍における粒子の巨視的混合領域の時間変化に関して考察を行い,物理モデルを構築した.また,数値解析結果の検証のため,複数の蛍光粒子を用いた新しい混合実験装置および測定システムの開発を行った.開発は順調に進展し,現在,数値解析と同一条件での実験を遂行している段階にある.粒子混合現象の研究に関しても,当初の研究計画通りに進展している. 上記2つの目的に対して概ね順調に研究が遂行されたと判断している.得られた研究成果は,引き続き国内外の学会で発表を行い,国際的学術誌に投稿する.また学術講演会や産学官連携イベントなどで積極的に公表を行い,研究成果の普及に努める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに本研究の1つ目の目的である「微粒子濃度界面の動力学的性質の解明」に関して,流路の形状変化を含めた広範な条件で実験を行い,濃度界面の不混和性がどのような条件で現れるのか,またその結果沈降形態がどのように変化するのかに関しての知見を得た.今後は,従来さまざまな工学分野で行われてきた多孔質体中における溶質移動や不混和2流体の移動現象に関する研究結果との類似性,非類似性について考察を行い,本研究成果の汎用性について検討を行っていく. 2つ目の目的である「濃度界面における微粒子混合現象の解明」に関しては,point force model に基づく数値解析によって粒子混合のメカニズムが解明されたことから,これまでの成果を投稿論文として早急にまとめる予定である.今後は,新たに開発した実験装置および測定システムを用いた粒子混合実験に注力する.実験により濃度界面近傍の粒子混合度を定量化し,数値解析結果との比較を行うことで混合メカニズムの解明を目指す.また,新しい粒子運動測定システムの開発自体に関しても,国内外の講演会での発表や投稿論文による発信を随時行っていく.
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