研究実績の概要 |
本年度は、顕微鏡を用いた生体計測手法を構築し、生体内流動および微小生物運動に関する研究課題を推進した。主要な研究実績は以下の通りである。1.ゼブラフィッシュ稚魚の腸内における流動構造を可視化し、腸蠕動による流動と撹拌機能について定量的に評価を行った。(Kikuchi, et al., AJP - Gastrointest. Liver Physiol., 2020)2.線虫C.elegansの口腔内における大腸菌捕捉を可視化し、高粘性環境における生存メカニズムについて力学的解明を行った。(Suzuki, et al., J. Exp. Biol., 2020)3.豚皮膚を用いて皮膚上への繰り返し摩擦による皮膚の脆弱化について力学モデルを用いて解明を行った。(Kikuchi, et al., Int. J. Pharm., 2020)4.上面発酵酵母菌の発酵時における炭酸ガス発泡による酵母菌浮上の可視化に成功し、発泡による培養容器内の流動促進による拡散効果と細胞分裂の促進効果について実験及び数理モデルに基づくシミュレーションによる解明を行った。(Atul, et al, Roy. Soc. Interface, 2020)細胞スケールによるエネルギー代謝による酵母発酵由来の発泡が自身の細胞増殖へとフィードバックされていることを見出し、流動構造と細胞増殖との生体流動の生物学的貢献について実験的および数理的に解明を行った。生体運動や生体活動が由来となる流動に関して、それぞれの環境に特化した生体流動イメージングを実現し、物質輸送や細胞増殖が生体由来の流動と密接に関与することが本研究により明らかとなった。輸送現象の直接計測により物質輸送の数理モデルを構築・検討することで、生体に関する物質輸送論の発展に資する結果が得られた。
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