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2019 年度 実績報告書

集束超音波によるキャビテーション初生と気泡クラウドの成長崩壊機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H02070
研究機関大阪府立大学

研究代表者

高比良 裕之  大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80206870)

研究分担者 小笠原 紀行  大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00552184)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード混相流 / 気泡 / キャビテーション初生 / 集束超音波 / 準安定状態
研究実績の概要

集束超音波のレーザ誘起気泡界面での後方散乱に起因するキャビテーション気泡クラウドの成長を可視化するとともに,キャビテーション初生圧力を計測した.種々の温度,溶存酸素濃度におけるキャビテーション初生圧力を計測し,水温が304.6 Kで溶存酸素濃度が2.0 mg/L~3.5 mg/L の範囲では,キャビテーション初生圧力は約-25 MPaであることを示すととともに,水温に対するキャビテーション初生圧力の相関式を導いた.また,グリセリン水溶液中でのキャビテーション初生と気泡クラウドの成長を調査した結果,グリセリン濃度が増加すると,キャビテーション初生と気泡クラウドの成長は概ね抑制されたが,30%グリセリン水溶液の場合には,脱気水以上に気泡クラウドが成長する場合もあることが示された.さらに,ゼラチン内でのキャビテーション初生を調査し,レーザ誘起気泡崩壊後の残存気泡が集束超音波の散乱体として,キャビテーション初生に寄与することが示された.
Ghost Fluid 法を用いて,実験で観測されたレーザ誘起気泡と気泡クラウドを模擬した気液界面による集束超音波の後方散乱を数値計算し,後方散乱により形成される強い負圧の場所が,キャビテーション初生位置と符合することを示した.また,Ghost Fluid 法と気泡の運動方程式をカップリングした計算方法を考案し, 集束超音波の後方散乱により形成される圧力場中での気泡核の成長について調べた.その結果,初期気泡核半径に比例して,気泡の初生領域は大きくなっていく等の知見を得た.さらに,実験で計測された圧力データを用いて気泡核の成長過程を解析した.気泡核の成長に及ぼす各種因子の影響を調査し,表面張力の温度依存性が気泡の成長に最も大きな影響を及ぼしていること,気泡が可視化できるサイズまで成長した後,超音波に応答せず安定に存在する場合があること等を示した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

集束超音波のレーザ誘起気泡界面での後方散乱に起因するキャビテーション気泡クラウドの成長を可視化するとともに,キャビテーション初生圧力を計測し,キャビテーション初生圧力の温度ならびに溶存酸素濃度に対する依存性を示した.また,グリセリン水溶液中でのキャビテーション初生と気泡クラウドの成長に及ぼすグリセリン水溶液の濃度の影響が明らかとなった.さらに,ゼラチン内でのキャビテーション初生実験手法を考案し,レーザ誘起気泡崩壊後の残存気泡が集束超音波の散乱体として,キャビテーション初生に寄与することを示した.以上,実験は概ね予定通りに遂行されており,得られた知見は,今後の研究の推進に有用である.
数値計算においては,Ghost Fluid 法と気泡の運動方程式をカップリングした計算手法を考案し, 集束超音波の後方散乱により形成される圧力場中での気泡核の成長挙動の調査を進めている.さらに,実験で計測された圧力データを用いて気泡核の成長過程を解析した結果,気泡核の成長モデルにおける重要な因子が明らかとなり,今度の指針が明確になった.

今後の研究の推進方策

引き続き,集束超音波のレーザ誘起気泡界面での後方散乱に起因するキャビテーション気泡クラウドの成長過程を可視化するとともに,キャビテーション初生圧力を計測する.今後は,より生体内に近い環境であるゼラチン内でのキャビテーション初生の解析に重点をおく.これまでの研究により,ゼラチン内ではレーザ誘起気泡崩壊後に残存する微小気泡が集束超音波の散乱体として,キャビテーション初生に寄与することが示された.そこで,今後は,残存気泡のサイズとその生存時間との関係を明らかにした上で,残存気泡のサイズが集束超音波の後方散乱ならびにキャビテーションクラウドの成長に及ぼす影響を明らかにする.あわせて,蒸留水またはゼラチン内で成長した気泡クラウドに,バースト波を照射し,気泡クラウドの崩壊の機構を明らかにする.気泡クラウドが崩壊する際に発生する衝撃波の可視化ならびに光ファイバープローブハイドロフォンを用いた衝撃圧力計測を通して,気泡クラウドの崩壊が促進される条件を求める.
数値計算では,Ghost Fluid 法と気泡の運動方程式をカップリングした計算手法を発展させ,キャビテーション初生と気泡クラウドの成長をシミュレートする計算手法を開発する.具体的には,まず.空間内にランダムに配置した気泡核がGhost Fluid法における格子解像度以上に成長し,Level-Set関数により界面として認識可能となるまでは,気泡の運動方程式を用いて微視的な気泡挙動を計算する.その後,気泡核が格子解像度以上に成長した計算領域を抽出し,その界面情報をLevel-Set関数を用いて表現することにより,Ghost Fluid法を用いて,巨視的な場を計算する.また,実験で計測された圧力場の下で,球形気泡の運動方程式を解析することにより,気泡が可視化できるサイズまで成長した後,超音波に応答せず安定に存在する条件を明らかにする.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Cavitation inception pressure and bubble cloud formation due to the backscattering of high-intensity focused ultrasound from a laser-induced bubble2020

    • 著者名/発表者名
      Taisei Horiba, Toshiyuki Ogasawara, Hiroyuki Takahira
    • 雑誌名

      The Journal of the Acoustical Society of America

      巻: 147 ページ: 1207~1217

    • DOI

      https://doi.org/10.1121/10.0000649

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 集束超音波中の気泡界面での後方散乱により形成される圧力場での気泡核の成長2019

    • 著者名/発表者名
      眞海勇輝,堀場大生,小笠原紀行,高比良裕之
    • 雑誌名

      日本流体力学会年会2019講演論文集

      巻: 1 ページ: 1~4

  • [雑誌論文] レーザ誘起気泡界面での集束超音波の後方散乱によるキャビテーションクラウドの形成に及ぼす温度と溶存酸素量の影響2019

    • 著者名/発表者名
      陳義,堀場大生,小笠原紀行,高比良裕之
    • 雑誌名

      日本流体力学会年会2019講演論文集

      巻: 1 ページ: 1~4

  • [学会発表] Cavitation Cloud Formation by High Intensity Focused Ultrasound Caused by Backscattering from a Laser-Induced Bubble in Glycerol-Water Solutions2019

    • 著者名/発表者名
      Yuki Susa, Taisei Horiba, Toshiyuki Ogasawara, Hiroyuki Takahira
    • 学会等名
      ASME-JSME-KSME Joint Fluids Engineering Conference 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] 集束超音波中の気泡界面での後方散乱により形成される圧力場での気泡核の成長2019

    • 著者名/発表者名
      眞海勇輝,堀場大生,小笠原紀行,高比良裕之
    • 学会等名
      日本流体力学会年会2019
  • [学会発表] レーザ誘起気泡界面での集束超音波の後方散乱によるキャビテーションクラウドの形成に及ぼす温度と溶存酸素量の影響2019

    • 著者名/発表者名
      陳義,堀場大生,小笠原紀行,高比良裕之
    • 学会等名
      日本流体力学会年会2019

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公開日: 2021-01-27  

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