研究課題/領域番号 |
19H02071
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
塚原 隆裕 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 准教授 (60516186)
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研究分担者 |
川口 靖夫 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 教授 (20356835)
福留 功二 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (70710698)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 亜臨界遷移 / 壁乱流 / DNS / 環状流 / 非相似性 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は,同心二重円筒間の環状流における亜臨界遷移過程の解明と,現象の工学的応用を目指した螺旋乱流の伝熱特性の解明および制御効果の検証であり,当該年度においては,平行平板流れ(半径比が極限1の環状流に相当)も含めた各種環状流(平面流/環状Poiseuille流/環状Couette流/環状Couette-Poiseuille流)の各種流動形態について個別にDNS(直接数値計算)を行い,それぞれに見る亜臨界乱流遷移過程とそのレイノルズ数依存性を明らかにした.螺旋状の乱流縞や乱流パフもしくは直線状の乱流パフを環状Couette-Poiseuille流で観測しており,特に後者の局在乱流構造の追跡の結果として分裂&減衰を捉えることに成功した.これは,円管内流の亜臨界遷移問題も含めた確率的非平衡現象としての解明と(平面流に見られる)乱流縞との関係性を明らかにする上で,重要な発見と考えている.さらには,環状Taylor-Couette-Poiseuille流のDNSコードを構築し,下臨界条件や螺旋乱流の発生範囲を調査する基盤が出来上がった.環状Poiseuille流の熱伝達を解析した結果,螺旋乱流がもたらす伝熱促進効果を定量的に実証できた.また,発達中の乱流斑点を対象に熱と運動量輸送の非相似性を検証し,高い伝熱特性を有する過程の特定を試みた. 偏心可能な環状Poiseuille流の実験水路を構築し,螺旋乱流の観測的実証や下臨界レイノルズ数調査を開始した.半径比が約0.5の同心二重円筒流路において,少なくとも有限長の螺旋パフの観測に成功した.螺旋パフを形成する局在乱流域の太さや主流方向に対する傾斜角度は,既にDNSで観測されたものと良く一致していた.また偏心二重円筒流路においては,ギャップ幅の違いによる乱流間欠構造の空間的差異が見られるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平行平板流れも含めた各種流路における大規模なDNS解析が順調に進んでいる.具体的には平面Poiseuille流,環状Poiseuille流,環状Couette流,環状Couette-Poiseuille流,環状Taylor-Couette-Poiseuille流の5種である.さらには,平面Poiseuille流において分散性質点系粒子を含む2-wayシミュレーションを実施し,混相流における乱流縞のロバスト性までを検証することができ,結果をまとめて論文発表の準備に取り掛かっている. 環状Poiseuille流の螺旋乱流における熱伝達特性を解析し,その特異な間欠構造がもたらす有意な乱流熱流束を特定することに成功し,現象理解に基づく熱交換器等への工学応用(伝熱促進や乱流遷移抑制)の可能性が見えてきた.これについて英文学術雑誌(査読付き)で発表し,オープンアクセスとして広く公知している. 二重円筒間水路による螺旋乱流の実証実験においても,着実にデータが得られてきた.まだ,数値計算通りの半無限長である螺旋乱流の同定には至っていないが,螺旋パフの実証や,内円筒偏心による下臨界条件の変化について定性的にも傾向が把握できてきた.以上は,ほぼ計画通りの進捗である.
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き平面流および環状流の各種流動形態について個別にDNSを実施してデータを蓄積するが,それぞれに見る亜臨界乱流遷移過程について統一的解釈の実現を目指していく.特に,近年関心が寄せらているDirected-Percolation普遍クラスとの関連性を明らかにするため,臨界現象における特徴量の定量評価を試みる.これの実現には,大規模計算領域と長時間計算が肝要であり,大型計算機を活用したHigh-Performance Computingを実施していく.得られた結果については,非平衡物理学を専門とした国内外の共同研究者とも議論を重ねて,DP普遍クラスとしての是非を慎重に見定めていく, 現象の工学的応用を目指して,螺旋乱流による伝熱特性への寄与の円筒比依存性や制御効果の検証を行う.特に後者は,乱流斑点に見る熱と流れの非相似性に着目した解析を行う.また,偏心環状流の可視化実験結果に基づいて,内円筒偏心による臨界条件の制御効果および遷移構造の解明を行う.
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