研究課題/領域番号 |
19H02076
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒瀬 良一 京都大学, 工学研究科, 教授 (70371622)
|
研究分担者 |
立花 繁 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 上席研究開発員 (50358496)
横森 剛 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90453539)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 燃焼騒音 / 予混合火炎 / 乱流 / 実験 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
(1) 実験: 弱旋回予混合バーナーにおける水素火炎の近傍に壁面(材質は石英)を設置して試験を実施し,壁面が燃焼騒音の音圧レベル,スペクトル特性,火炎挙動,及び流速場に及ぼす影響を調べた.また,壁面とバーナー出口の距離dを29,172,344mmと変化することで,壁面の燃焼騒音への影響を調査した.騒音計測にはマイクロフォンを使用し,騒音計測と同時にOH*自発光計測及び2次元PIV計測を実施した.試験条件はバルク流速15m/s,当量比0.25,0.35,0.45とした.その結果,d=29mmにおける当量比0.35及び0.45の条件では,壁面なしの結果と比べて,約300~900Hzの範囲で騒音スペクトルが増大することが確認された.この違いは,壁面と火炎及び流速場の干渉によって,火炎の発熱率特性が変化したためと推察された. (2) 数値計算: 上記の壁面が存在しない場合の弱旋回乱流希薄水素火炎に対して,燃焼モデルとしてFGM法を採用した3次元LESと,APE-RF を使用した3次元CAA をカップリングするHybrid LES/APE-RF Approach を適用することにより,その数値解析法の適用性を評価するとともに燃焼騒音特性を詳しく調査した.その結果,本数値解析で得られた燃焼場の流速分布,火炎の浮き上がり高さ,およびSound Pressure Level(SPL)の周波数分布は実験値と概ね一致することが確認された.また,本数値解析は,実験において計測されたSPLの周波数分布における940Hz付近および500Hz付近の特徴的な2つのピークのうち,高周波数側のピークを概ね再現可能であり,このピークはせん断層で生成される渦構造によって局所的な熱発生率が周期的に変動することにより引き起こされることがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響で上期は試験の機会が取れず苦労したが,下期に入って積極的に進め,順調に終えることができた.非常に興味深い結果が得られたので,2021年度はより詳細なデータ取得を行う予定である.一方,数値計算については,2019年度に残されていた問題(ノズル出口における周方向の流速分布の再現性が悪い)を解決し,当初の予定通り,試験と同様の壁面を火炎近傍に設置した条件でのHybrid LES/APE-RF Approachの実施に取り掛かった.計算が終了次第,試験で得られたデータとの比較を行うことによって,計算精度の検証を行うと共に,壁面における境界条件の最適設定法について詳細な検討を行う予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 実験: 2020年度に取得した火炎近傍に壁面を設置した条件におけるデータを,特に時系列における火炎や流速場の挙動に着目することで詳細に解析し,壁面が燃焼騒音スペクトルに変化を及ぼすメカニズムを調査する.また,メカニズム解明のために,2020年度と異なる流速,当量比,壁面とバーナーの距離等の条件において追加の試験を実施する.計測手法としては,マイクロフォンによる燃焼騒音計測,OH*自発光計測,及び,2次元PIV計測を同時に,高い時間分解能で実施する.2020年度同様に,レーザー反射光の低減・除去技術の向上にも継続して取り組み,計測データの更なる精度向上に努める. (2) 数値計算: 2020年度から継続して実施中の,試験と同様の壁面を火炎近傍に設置した条件でのHybrid LES/APE-RF Approachの計算が終了次第,試験で得られたデータと詳細比較を行うことによって,同解析手法の計算精度の検証を行うと共に,壁面における境界条件の最適設定法について詳細な検討を行う.また,数値解析からのみ取得可能な,エントロピー,温度,速度,圧力等の変動特性を詳しく調べることにより,燃焼騒音の変調特性を明らかにする.
|