本研究では,2021年度には高耐圧型の反応容積制限型衝撃波管の構築を完了した.反応容積制限型衝撃波管は着火遅れを高精度に計測可能な技術として期待されているが,過去には10atmまでしか採用された例がなく,本研究では世界初30atmまでの条件において該手法による着火遅れの計測を実現した. 本年度は,次世代バイオ燃料を構成する飽和炭化水素のみならず,最近提案された5成分ガソリンサロゲート燃料や,直近でガソリンに混合される可能性の高いバイオ燃料としてエタノールも対象として,30atmの高圧条件において着火遅れの計測を行った. 始めに衝撃波管の検証を行った.過去に検証されたガソリンサロゲート燃料について,温度・当量比をさまざまに変化させて着火遅れを計測した結果,ショット毎のばらつきが非常に小さなデータが得られた.またそれらはKUCRSによる詳細反応計算で良く再現されることが確認された.なお,1ショット毎の使用燃料量は従来の1/5以下に抑制された. 次に,これまで検討を続けてきた混合の影響について明らかにするべく実験を行った.ここまでに飽和炭化水素のみの混合では着火遅れ期間の制御範囲が1000K以下に限定されることが判明しているため,本研究では特に高温域での着火遅れを制御可能とされるエタノールを対象に,ガソリンサロゲート燃料に混合する実験を行った.結果,エタノールをわずかに混合することで高温側の着火遅れを大幅に短縮可能であることが判明した. なお,生成物に注目したC2H2の計測については10atmまでの条件で吸収係数の計測を行った.Hansonらのグループにより4atmまでしか計測されていなかったが,本研究で10atmにおける吸収係数が得られた.この結果により,高圧条件でのC2H2の吸収法による濃度計測が可能となった.
|