研究課題/領域番号 |
19H02079
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
野村 信福 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20263957)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマプロセス / 有機反応 / ラジカル |
研究実績の概要 |
プラズマによる化学反応プロセスを理解するには,ラジカル種の挙動を理解することが重要である。ラジカルには多くの励起状態が存在し化学反応に影響を及ぼす。本研究では,水面に周波数2 kHzから200 KHz、出力パルス幅は0から1.5μsのパルス発生電源を利用して,水面上放電を発生させ,この放電によって発生するOHラジカルをLIF法により測定した。282nmのレーザーを水面上放電に照射することによって,基底状態のOHラジカルの発生を確認した。OHラジカル密度は,電極から離れるにつれて高くなり,その後ピークを迎え,水面に近づくにつれ減衰する。OHラジカルの量の周波数依存性は確認できなかった。 OHラジカルによる液中プラズマ反応の実験として,常温常圧下でのアンモニア合成実験と,メチレンブルーの分解実験を実施した。メタノール中でプラズマを発生させ,これに窒素ガスまたは空気を供給することで,一段階プロセスでアンモニアが合成できることを明らかにした。合成されたアンモニアの量は少なく,反応後のガスの多くは,水素ガスとして外部に排出された。供給ガス中の炭素と酸素の原料比C / O と水素生成効率に大きく影響をうける。液体と供給ガスのC / O が 1 に近いとき,アンモニア合成効率が高くなる。液中プラズマよるメチレンブルーの分解実験では,反応容器側面から空気を取り込むエジェクター方式のノズル内部で液中プラズマを発生せたとき,最も高い分解効率を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LIF法により、水面上放電で発生する基底状態のOHラジカルの発生を確認した。OHラジカル関連した反応として、常温常圧下でのアンモニア合成と、メチレンブルーの分解実験を実施し、OH反応による効果を明らかにした。これらの成果は学術論文にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
水中プラズマ発生時に生成される,主に312nmと309nmのOH発光に着目し,これらの分布や強度が,化学反応に及ぼす効果を明らかにする。測定対象となるラジカル種の励起エネルギーに一致する波長のレーザー光を照射し,ラジカルが電子励起した後に放射する蛍光をバンドパスフィルターを介してLIF信号として計測する.また,OHラジカルに関する励起状態計算を実施し,UV-Visスペクトルを予測する。プラズマによる化学化学反応経路は量子化学計算から,液中プラズマ反応によって生成する有機化合物の生成反応を考察し,その反応経路の妥当性を検討する。生成物の分子の構造,全エネルギー,結合次数を計算し,実測結果と妥当性を検証していく。
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