研究課題/領域番号 |
19H02080
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北川 敏明 九州大学, 工学研究院, 教授 (40214788)
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研究分担者 |
渡邊 裕章 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60371598)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 燃焼 / すす / 予混合火炎 / モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,新たに考案した非常に単純化した燃焼場での研究手法を用い,粒子状物質(ParticulateMatter, PM)であるすす生成についての実験および数値シミュレーションによる解析から,すす生成機構を解明している.さらに,その知見に基づきすす生成の新たなモデルを構築している. 予混合燃焼によるすすの生成に及ぼす火炎伸長の影響を明らかするために,均質過濃混合気の燃焼により生成される粒子状物質について調べた.実験ではイソオクタン-空気均質過濃予混合層流および乱流火炎により生成される粒子状物質をサンプリング,分級し,その粒径分布を統計的に精度良く解析するため,新規に導入したエアロゾルスペクトロメーターの調整および燃焼ガスのサンプリング方法の検討を,当量比1.4およびすす生成の臨界当量比付近である当量比1.8の混合気を用いた燃焼実験により行った. また,研究代表者のこれまでの研究から,ルイス数が小さく火炎の不安定性が強く現れるイソオクタン-空気均質過濃予混合層流火炎では,この不安定により生じる火炎のカスプ部においてすすは生成されていることを明らかにしている.火炎カスプ部の様子を明らかにすることは,すす生成機構を明らかにするうえで有用であるものと考えられるため,この火炎面に生じる不安定性の定量的評価を行った. 数値シミュレーションでは,すすの核発生,凝集,表面成長,酸化のモデルを組み込んだすす数密度,質量密度の輸送方程式を解く数値シミュレーションを,当量比1.8の予混合層流火炎伝播について行った.ニューラルネットワークを用いたAI予測手法を用い,すす生成量に対し温度,ガス流速,化学種濃度の各因子がどのように影響しているかを調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,すすの生成量低減に資するために,球状伝播層流および乱流予混合火炎により,火炎伸長とすすの生成の関係という新たな観点から,すすの生成機構を明らかにしている.そして,その知見に基づきすすの生成量低減法を提案することを目的としている. イソオクタン-空気層流火炎において現れる不安定性によるカスプ部においてすすが生成されることから,当量比1.4,1.6および1.8において,実験により得られた火炎の断層写真から不安定性波数および増幅率を求める手法を開発した.そして,従来の理論的不安定性解析と実験結果の比較を行い,理論的解析結果は定性的には実験結果と一致すること,および,定量的にどの程度の相違があるかが明らかとなった. また,不安定性の現れた火炎を模擬した凹凸を有する火炎に対する数値シミュレーションにより,局所の火炎形状とすす生成量の関係を調べるとともに,すす生成量に対し温度,ガス流速,化学種濃度の各因子がどのように影響しているかについて,ニューラルネットワークを用いたAI予測手法を用いた検討を行った.しかしながら,不安定が出現した火炎の再現が十分ではなく,層流火炎における熱-拡散効果や乱れによるすす生成の詳細な検討には至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,実験および数値シミュレーションにより,火炎への熱-拡散効果や乱れによるすす生成機構の解明を予定していたが,詳細な検討には至っていない. エアロゾルスペクトロメーターによるすすの分級,粒径分布を解析するための方法を確立したので,次年度はこれを適応し,すす生成機構を解明に活用する.また,次年度,新たにレーザーエアロゾル粒径分析器も導入し,解析を進展させる. 数値シミュレーションにおいては,球状伝播火炎での不安定性発現するペクレ数まで計算を進めることができなかったので,2次元定在火炎での不安定性について計算を行い,その知見に基づくすす生成機構の解明とモデル化も並行して検討する.
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