ペプチド,アミノ酸などのタンパク質系生体高分子を用いた生物製剤の製造技術について,凍結乾燥に代わる高効率・高品位乾燥が求められている.これに応えるべく,本研究課題はマイクロ波を用いた常温発泡乾燥法を提案し,ガラス化処理の実現によってタンパク質の機能が失活しないことを実証することによって,手法の有効性を示すものである. 今年度は,乾燥プロセスの観察・計測をin-situで行うことに取り組み,乾燥による水分量変化などを計測するために乾燥を中断して装置外の大気圧条件下に取り出すことをせずに,乾燥装置内で連続的に計測できる全く新しい手法を開発した.この真空乾燥容器内で測定するin situ計測法を開発したことにより,連続的なマイクロ波真空乾燥がタンパク質水溶液の発泡挙動とその泡形状を維持したままでガラス化させることに成功した. さらにこの成果は,これまでの課題であった外圧と乾燥中断による泡形状の崩壊を回避するに留まらず,不可逆的な泡形成を可能とするマイクロ波制御法に関する新たな知見を得ることに繋がった.すなわちそのマイクロ波制御方法とは,乾燥とともに溶液の粘度がある状態まで増加するタイミングを持ってマイクロ波出力を増大し,泡を立体的に膨らませ,その形状を維持したままで乾燥固化させるという全く新しい方法である.これにより,泡を構成する高濃度の薄い液膜状態が安定的に維持され,ゴム領域を高速に通過させることが可能となった. なお,もう一つの課題であった突沸による溶液飛散については,容器をシリコン製とすることにより解決できることも見出した. 以上の新しい工夫と乾燥プロトコルの最適化により,豚胎盤由来のプラセンタ抽出液を乾燥したところ,残存活性および有効成分濃度において,これまでの既存技術による乾燥に比較して有意な差が確認でき,生物製剤の革新的ガラス化保存法を確率することができた.
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