前年度明らかになった,金属ナノ粒子集合体では粒子の固定化密度のばらつきのためにプラズモニクス誘起熱現象が一貫しないという問題について,電子線描画装置を用いて100nm程度の金の周期構造をリフトオフを用いて製作することができ,粒子集積実験を行った結果,安定してプラズモニクス誘起の粒子操作を実現することができた.これにより,異なる操作対象や基板においても評価できるようになった. また,50mW程度の強いレーザ光を照射した際に発生する微小気泡を用いたナノ粒子輸送に関して,底面からと側方からの顕微観察を行って粒子移動のダイナミクスを評価した結果,気泡発生から10ms前後において大きく流動パターンが変化していることが明らかになり,これまで理論的に説明されていた気泡の界面全体が動くような流動様相は10msまでしか維持できていおらず,それ以降は気泡の上部界面はほぼ移動せずに下部のみが動く様子を確認した. 金属ナノ構造体を用いて,タンパク質やDNAなどの生体ナノ物質についても輸送実験を行い,各種サンプルに応じて現象の差異は見られるものの,全てのサンプルについて集積可能であることを示し,本研究が提案するプラズモン誘起の熱流動の有効性を明らかにした.
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