金属/酸化物/金属の3層薄膜構造における特異熱輸送の発現機構の解明・学理構築に向けて、主に界面ラフネスの影響を明らかにするために、実験的アプローチ及び解析的アプローチの両面から取り組んだ。Mo/アモルファスHfO2/Moの3層膜の実験的アプローチでは、測定温度を300 K、250 K、200 Kと3水準準備し、特異熱輸送発現における温度依存性を検討した。250 Kおよび200 Kにおいては、室温におけると比較して顕著な変化は見られず、特異熱輸送発現について明確な違いは確認されなかった。 解析的アプローチでは、産総研が保有するサーモリフレクタンス測定信号シミュレータを使い、下地金属との界面ラフネスが計測信号に与える影響について定量評価した。中間層厚さ10 nm、5 nm、 3 nmの3水準、四角錐型の界面ラフネス形状(勾配0.5、1、3、5)、界面熱抵抗3水準について系統的なパラメーター解析を実施した。界面ラフネスの影響はいずれの中間層厚さおよび界面熱抵抗においても実効的な3層資料全体の熱抵抗が減少する傾向が観測された。減少の程度はこれまでの特異熱輸送で見られてきたように大きなものであった。 本研究で得られた知見に基づいて国際誌への論文投稿を進めた。
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