研究課題/領域番号 |
19H02088
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
梶原 逸朗 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60224416)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レーザー / 振動計測 / ヘルスモニタリング / 損傷検知 / インパルス応答 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究において,前年度に構築したコンクリートの硬化モニタリングに関する基礎技術に関し,その高度化を目指し検討を行った.すなわち,コンクリートに挿入したアルミ二ウム梁(Al梁,A6063)の振動特性をレーザーで非接触加振/計測し,Al 梁を支えるモルタルの状態を推定することにより,硬化モニタリングにつなげられる手法の構築を検討し,その高性能化を図った.また,FEM 解析により,Al 梁のモード周波数とモルタルの弾性率の関係を見出し,Al 梁の振動応答からモルタルの硬化状態を定量的に評価した.ここで,材料(Al梁およびコンクリート)の物性値(密度,ポアソン比,ヤング率)に関し,コンクリートのヤング率を除き,標準値を与えた.そして,コンクリートのヤング率をパラメータとし,モード周波数解析を行った.解析に基づくAl梁のモード周波数と実験結果における共振周波数を合わせ込むことにより,そのときのコンクリートの状態におけるヤング率を推定した.さらに,さまざまな梁長・材質の条件で実験およびモルタルの弾性率推定を行い,適切な梁条件について考察した. 上記検討を行った結果,モルタルの硬化に伴い,Al梁の振動の減衰時間および固有モード周波数が変化することが確認された.また,実験条件に基づくFEM解析結果から,モルタルの弾性率の上昇に伴い,Al梁のモード周波数が高くなり,実験から得た変化と合致することが示された.そして,実験で得た共振周波数とFEM解析で得たモード周波数から,モルタルの弾性率の時間変化が得られた.この変化は,これまで用いられていた貫入抵抗試験の結果と矛盾しない硬化過程の推移を示した.さらに,さまざまな梁長・材質の条件で検討を行った結果,硬化程度推定における適切な梁長および材質が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,研究代表者が提案・開発したレーザーアブレーションおよびレーザーブレイクダウンを用いた非接触インパルス加振法に基づく振動計測技術を高度化させ,さまざまな先端機械システムの特性・性能評価のみならず,機器/建屋/インフラ統合系への応用展開を図り,従来技術では不可能であった対象・分野・環境における振動計測および動特性評価を可能にすることを目的としている.第二年目の目標として,前年度に構築したコンクリートの硬化モニタリングに関する基礎技術に関し,システムとしての精度および信頼性を向上させることに目標を設定した.インフラ構造を支えるコンクリートに関し,その強度特性を十分に発揮するには,コンクリートの時間経過による特性変化をよく把握した適切な施工が必要である.大手ゼネコン企業との共同研究を実施している背景から,コンクリート(モルタル)の硬化度を高い精度および信頼性で推定することは非常に重要な課題であると認識し,第二年目の研究としてこれらの課題解決に向けた検討に取り組んだ.その結果,「研究実績の概要」で述べたとおり,本研究の実施により有効な成果を得ることができた.ここで得られた成果は,本研究で目標としている機器/建屋/インフラ統合系の動特性評価およびヘルスモニタリングに関し,本手法・技術がそのベースとなり得ることを示している.したがって,本手法・技術を拡張かつ高度化することが,本研究を円滑に遂行することにつながると考えられる. 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
コンクリート(モルタル)の硬化モニタリング技術のさらなる高度化を目指す.本研究で提案・構築した非接触レーザー加振/計測システムおよびFEMシミュレーション技術に基づき,試験体の硬化過程における動特性の変化を詳細に分析することにより,システムの最適化を図る.これを実現すべく,下記の検討を行う. (1)硬化試験体のサイズや種類を変えた複数の実験を実施する. (2)これまでに構築したFEMモデルには改良の余地がある.特に,硬化初期はモルタルが流動性を持つため,粘性を考慮する必要がある.また,モルタル表面と内部の硬化状態には差が生じる.このような状態変化をFEMモデルで再現する. (3)実験とシミュレーションを組み合わせた試験体弾性率の予測では,梁の条件によって結果に差が現れた.この要因を明らかにし,シミュレーションの精度および信頼性を向上させる. 上記に加え,コンクリート(モルタル)の弾性率(貫入抵抗値)の推定を高い精度および信頼性で実現すべく,弾性率推定に深層学習を導入する.二年目までの研究では,実験とシミュレーションから試験体の硬化程度予測を行い,有効な結果を確認した.ただし,これまでの検討において,FEM解析を行う際に試験体の条件をモデルに反映させる必要があり,硬化モニタリングにおける負荷が大きいという課題がある.したがって,FEM解析を必要とせず実験データのみで硬化程度の判定を行う手法が求められる.今後の研究では,複数の実験データと試験体硬化程度の関係を学習させ,他の実験データの硬化程度を判定する深層学習を実行する.ここで,深層学習による硬化程度推定の信頼性を向上させるべく,様々な条件における多くの実験データを獲得し,それらを基にモデルや学習パラメータの最適化を図る.
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備考 |
北海道大学 大学院工学研究院 知的構造システム研究室において実施された研究内容および得られた研究成果について紹介している.
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