研究実績の概要 |
2021年度は,コンクリートの材料減衰に着目し,減衰特性の推定および評価法の構築に主眼を置いて検討を行った.構造部材の高減衰化は,耐震性や居住性の向上に繋がる可能性があり,それを実現するための評価法および材料開発技術の構築は大きな社会的意義および工学的意義をもつと考えられる.実験では,試験体として,A:「φ100×200mmのシリンダ状試験体」,B:「φ100×400mmのシリンダ状試験体」およびC: 「40×40×160mmの角柱状試験体 (水セメント比:40%, 50%, 60%の3種類)」の3つを対象とした.また,加振にはインパルハンマーおよびレーザー加振を採用し,振動計測のセンサとしてレーザードップラー振動計を用いた. 試験体AおよびBについて,加振点および応答点の組み合わせが異なる複数の周波数応答を計測した.試験体を均質材と仮定した有限要素解析(FEA)を実施し,固有モード特性を解析したところ,実験で計測された共振周波数とFEAで解析された固有振動数はよい相関を示した.そして,計測された周波数応答に半値幅法を適用し,試験体のモード減衰比を推定した.ここで得られた結果は,AR法および対数減衰率に基づく方法により計測データから推定されるモード減衰比と良い相関を示した. 試験体Cに対して,試験体の水セメント比の違いによる固有振動数および減衰比の特徴を抽出することを目的とし,振動計測および減衰特性の評価を実施した.振動試験および減衰特性評価の結果,水セメント比が大きくなるほど,基本共振周波数は低くなり,逆にそのモード減衰比は増大することが確認された. 以上より,本年度は様々な試験体に対し振動試験を実施し,計測された振動特性を評価することにより,試験体の形状および組成の違いによる固有振動数および減衰比の変化に関する特徴を抽出することに成功した.
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