研究課題/領域番号 |
19H02090
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藪野 浩司 筑波大学, システム情報系, 教授 (60241791)
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研究分担者 |
山本 泰之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (00398637)
松本 壮平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 副研究部門長 (70358050)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロレゾネーター / 生体試料 / 自励振動 / モード局在化 / バーチャルレゾネーター / FPGA |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に提案した連成カンチレバー方式での高感度化に関して、実際の生体試料観察に資するべく、レゾネーターのマイクロ化をさらに推し進めた。マクロスケールのレゾネーターに対して、固有振動数が1000倍以上増加するため、ディジタルシグナルプロセッサを用いた計算では制御が追い付かず、昨年度は新たな方法としてアナログ方式のバーチャルカンチレバーを提案した。近年、連成カンチレバー数をできる限り大きくすることにより感度向上が図られることが理論的に明らかにされたので、本年度は、それに対応できる新たな方式としてFPGA(ナショナルインスツルメンツ USB-7856R)を用いたバーチャルカンチレバー(バーチャルレゾネーター)を提案した。この方法を使って微小質量計測を行った。また、剛性計測に関しては実験装置の準備が完了した。 生体試料観察のための基礎技術として以下のものを確立した。 (1)液中に存在する生体試料の観察において、液体から測定対象へ与える質量効果を精確に計測することが重要である。本研究は非線形自励発振かにおける応答振幅と応答周波数との関係から、質量効果を実験的に同定する方法を提案し、実験によりその有効性を確認した。 (2)カンチレバーは非線形復元力を持っており、有限振幅において固有モードや固有振動数は、周波数に依存する。モード局在化理論は基本的に線形理論に基づいているため、正確な計測を行うためには、カンチレバーの非線形性を正確に求めておく必要がある。本研究では、非線形性の実験的な同定法を自励振動を用いて明らかにし、実験によってその有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レゾネーターの数を3つ以上に増やして感度を上げようとすると、速度フィードバックで完全に補償しきれていない粘性の影響が、レゾネーター数が2つの場合に比べて強く現れることが、本年度の実験によってはじめて見い出された。これまでに様々な研究者から提案されているモード局在化手法の理論は、測定環境の粘性を完全に無視したものであり、粘性が完全に除去されていない状況での新しい計測法の検討に時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況で述べたように、粘性が完全に除去されていない状況(実験において完全に除去することは不可能)において、新しい計測法を見い出す必要がある。そのために、減衰を含む多自由度振動系に生じるモード局在化に関する基礎振動理論に立ち返って、新たな制御法を構築する。一方で、すでに本研究で完成している、2自由度バーチャル方式においても、十分な感度を生態観察に対して得られると思われるので、本年度は実際の生態観察を行い、研究目標を達成する。
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