研究課題/領域番号 |
19H02097
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小嶋 勝 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (00533647)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノマイクロメカトロニクス / マイクロ・ナノデバイス / 刺激応答計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞外の環境を「その場」で制御し、その環境変化という刺激に対する細胞内構造の変化を計測し、さらに、この刺激応答計測結果を解析可能なシステムの実現に取り組む。 細胞組織の遺伝子発現・分化過程の原理究明は病理の解明や再生医療に重要な役割を果たす。この原理究明の1つの方向として、単体細胞内・少数細胞レベルでの刺激応答計測があげられる。そこで、細胞一つ程度の大きさの微小物体の局所力学刺激・化学刺激が可能な刺激応答計測用マイクロハンドシステムを基盤として発展し、本システムの高精度・高速化・自動化を実現する。さらに、光ピンセット技術と融合したシステムを構築することで効率の良い計測も実現し、生命現象の解明に適用する。特に、生命の基本単位である細胞の細胞 内小器官に注目し、細胞の内部構造を含む物理化学特性と機能発現との関係の解明を目指す。 2020年度は、対象細胞への局所機械刺激応答計測を行うための高感度なエンドエフェクタの改良を進め、新しい設計の高感度力計測可能なMEMSセンサの評価を試みた。その結果、細胞の剛性を計測する目的として十分な感度があることが確認された。また、局所化学刺激可能なエンドエフェクタの改良にも取り組み、ピペット間での噴出を実現した。光ピンセットのシステムへの導入も行い、アクチュエータのマニュアル操作による対象物の3次元的な任意の位置決めが可能なシステムを構築した。さらに、細胞を押しつぶす過程の蛍光像と明視野像を同時に取得可能な観察系を構築し、剛性計測の結果から、細胞核由来と思われる反力の計測に成功した。これにより、詳細な解析が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、対象細胞への局所機械刺激応答計測を行うための高感度なエンドエフェクタの実装を進め、作製工程を簡略化した新しい設計の高感度力計測可能なMEMSセンサの評価を試みた。最適化した測定条件化において、細胞の剛性を計測する目的として十分な感度があることが確認された。一方で、旧設計とほぼ同等の感度であり、感度のさらなる向上にはセンサ構造の改良が必要となると考えられる。また、局所化学刺激可能なエンドエフェクタの改良にも取り組み、エンドエフェクタ形状を変更すことで、ピペット間での噴出を実現した。さらに、光ピンセットのシステムへの導入も行い、ステージ及びマニピュレータ制御用アクチュエータのマニュアル操作により、マニピュレータと対象物の3次元的な任意の位置決めが可能なシステムを構築した。さらに、細胞を押しつぶす過程の蛍光像と明視野像を同時に取得可能な観察系を構築し、力刺激印加時の細胞核の形状の可視化を可能とした。この観察系を用いた剛性計測の結果から、細胞核由来と思われる反力の計測に成功した。これにより、詳細な解析が可能となり、さらなる発展が期待される。の影響による以上のように,COVID-19感染拡大の影響による遅延もあったが、システムの改良及び、細胞を対象とした検証実験を行い、良好な結果を得られており、計画が順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
細胞計測の効率化を進めるため、構築したシステムの自動化を行う。また、並行して変異したタンパク質を発現した細胞株を用いた計測実験をすすめ、細胞の内部構造を含む物理化学特性と細胞の機能発現との関係の解明を目指す。
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