研究課題/領域番号 |
19H02106
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
新田 高洋 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20402216)
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研究分担者 |
平塚 祐一 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (10431818)
森島 圭祐 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60359114)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生体分子モーター / マイクロロボット / 自己組織化 / 機能発現 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,細胞骨格ネットワークの自己組織化に着想を得て,外部環境を操作することにより,パーツの結合した高次構造の形態形成を誘導し,多様な機能を発現させる方法論を確立することである.これにより,外部環境に適応して多様な機能を発現するマイクロロボットの実現を目指す.このために微細加工技術により作製したマイクロウェル内に細胞骨格と改変した生体分子モーターを封入し,細胞骨格ネットワークと生体分子モーターからなるネットワークを自己組織化過程により形成させる.この際マイクロウェルの形状を適切に設計することにより有用なネットワーク形態が形成されるように誘導する.初年度は,微細加工によるマイクロウェルの作製,観察システムの構築,シミュレーションの開発を実施する計画である.マイクロウェルの作製については,顕微鏡による観察を効率化するために,単一基板上に様々な形状と大きさのマイクロウェルを作製した.今回は細胞の大きさ程度で,六角形などの様々な幾何学的形状や,運動中の細胞形態を模した形状などのマイクロウェルを作製した.次に,観察システムの構築については,顕微鏡用自動ステージとLED光源を用いることで基板上に作製したマイクロウェル内のネットワークの形態を網羅的に観察できるようなシステムを設計し,構築中である.この観察システムにより効率的に観察結果を取得できると期待される.シミュレーションの開発については,これまでの予備実験の結果をもとに壁面などと相互作用しながた収縮するネットワークの動きを定性的に再現するシミュレーションを作成できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画したマイクロウェルの作製,観察システムの構築,シミュレーションの作成を行った.マイクロウェルの作製については,フォトレジストを用いてマイクロウェルの作製を行った.比較的大きなマイクロウェルや単純な形状のマイクロウェルについては,概ね意図した形状に作製することが出来た.観察システムの構築については,当初自己組織化の開始制御と観察を同一の光源で行うつもりであったが,別々のLED光源を導入することにより柔軟な運用を行えるようにした.また顕微鏡用自動ステージを導入し基板上のマイクロウェルを網羅的に観察できるようにした.現在,ハードウェアのセッティングを完了し,制御プログラムを作成中である.シミュレーションの作成については,予備実験の結果を参考にして現象論的なシミュレーションを構築した.マイクロウェル内に封入されたネットワークがマイクロピラーやマイクロウェル壁面と相互作用するネットワークのシミュレーションを行えるようにした.マイクロピラーへの巻き付きなど,実験観察と定性的に類似の振る舞いが見られた.以上より進捗状況を概ね順調であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究を当初の計画通り進める.また2019年度の実施結果を踏まえて以下の点についても検討する.マイクロウェルの作製については,概ね意図した形状に作製することが出来たが,小さなマイクロウェルや複雑な形状をもつマイクロウェルでは作製の精度が低かった.2020年度は微細加工基板の作製の精度を高めるために,プロセスの条件や基板の選択などを再度詳細に検討する.また実験結果をもとに必要であればマイクロウェルの形状設計を改めて行う.2020年度の早い時期に,網羅的に自動観察を実現する観察システムを完成させ,自己組織化パターンの観察を行う.必要に応じて画像解析プログラムを作成する.シミュレーションについては現在では予備実験として行った類似の系の結果と比較しているが,今後実際の系の実験結果と比較し,より忠実に実際の細胞骨格ネットワークの振る舞いを再現できるようにシミュレーションモデルの改善を行う.またシステムサイズをより大きくするために,計算効率の向上や出力形式の改善を行う.
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