研究課題/領域番号 |
19H02107
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
江上 力 静岡大学, 工学部, 教授 (70262798)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レーザー顕微 / 微粒子 / 非線形光学 |
研究実績の概要 |
本研究では,リポソームや高分子NPなどのDDS(Drug Delivery System)微粒子の表面・内部のナノ構造や薬理特性を解析するために,ベクトリアルな偏光干渉系と光波混合光学系を用いた新たな非線形レーザ顕微鏡を開発し,保存溶液やマトリックス中で分光測定可能な超解像タイムラプスイメージング法を提案する.被測定微粒子に静的に備わる光学的な非線形分極にタグ機能を持たせ,これをDDSの3次元計測に利用する,当方独自のラベルフリー顕微計測技術の開発が目的である. 具体的には,超解像レーザ顕微光学系の設計・構築と特性評価および,3次元構造解析のための高CTF(Contrast Transfer Function)実現が主課題となる.昨年度と同様、研究期間の前半では,共焦点顕微鏡へのベクトリアル光波混合光学系の導入とベクトリアル偏光干渉光学系の導入を当初予定していた.本システムでは,光軸方向にも高い空間分解能を持たせた上,吸収媒体による極微小散乱光の局所計測を実現するために,通常の共焦点光学系に入射三光波と出射一光波がコリニア―な光軸配置を有する,ベクトリアル四光波混合系を導入しなればならない.ところがレーザ顕微鏡の研究課題であるにも関わらず、肝心のレーザ光源が調達でなかったため、既存所有の代替品を使って研究を進めてきた.結果、狙った波長帯とは異なる領域ではあるが、ナノ微粒子中での光波混合を実験的に確かめることができた.また、非線形テンソル性のみならず,ベクトリアル性も保持していることも確認できた.但し,予定していた初年度・次年度の目標達成には至っていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記研究実績の概要でも述べたが,2019-2021年度は世界的なコロナウィルス蔓延のため、学会等での調査研究ができなかった上,2022年度は米中摩擦間のみならず、ロシアによるウクライナ進行の影響から,米国による安全保障が強化され、本顕微鏡のキーデバイスであるレーザ光源が安全保障申請対象物品となってしまい,昨年春に改めて米国政府へ同申請を行った.ところが,今年に入っても未だその審査結果が届かず、レーザ光源を調達する目途が全く立たない状況である.対象とするタイプのDDS微粒子では特殊な波長のレーザ光源を使用するため,同レーザは日本では製造されておらず,今現在でも代替品が見つからない状況である.そのため,既存のレーザ波長に対応したクロモファドープ微粒子での実験しかできず,マルチ波長での分光光学系を導入する共焦点顕微鏡を構築することができなかった.加えて,昨年度もDDS分光が主に研究されている欧州での国際会議にて,情報収集と成果発表を兼ねた渡航を予定していたが,これについてもコロナウィルスの影響で,論文投稿していた学会がさらに1年延期となってしまった. 以上の理由から,研究課題の進歩状況は非常に遅れていると言わざるを得ない.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究においても,微粒子の共鳴波長を有するレーザ光源を入手し、共焦点顕微鏡へのベクトリアル光波混合光学系と,共焦点顕微鏡へのベクトリアル偏光干渉光学系の構築に取り組む予定である.ただし,現在も,米国安全保障申請の許可が未だ下りず、入荷の目途が全くたたない.光源が調達できない最悪の場合を想定し、既に所有しているレーザ光源に共鳴波長を有する代替DDS微粒子が存在するか否かについても調査する.また,光波混合光学系や偏光干渉光学系共に,サブミクロンからナノメートルの空間領域での,光波制御が必要となるため,特に光軸配置や干渉計構築の精度が既存のビームアライナー・オートコリメータ等では対応が非常に難しいところだが,ナイフエッジ法や臨界角法など,一般的な光学手法に自作の回路系を組み込むことで代替とすることができるか否かなどについても検討する. 本研究課題を申請した時点では全く予想もできなかった状況となってしまったため、DDS微粒子のタイプやそれに対応するレーザ光源の波長の変更,光学系の構築方法変更などを改めて再検討する必要がある.
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