本年度は,同一の脚長を有する全長約1.4mの歩行・走行ロボットを開発した.筋シナジーを考慮したコア筋群として,膝伸展筋の広筋(膝蓋骨を模擬)を空圧駆動,これに拮抗する2関節筋である腓腹筋および足部(アーチ構造の多関節)背屈筋の前脛骨筋をバネ/ダンパ付ワイヤで実現し,脚運動における重要な共通基盤となっている.また,自律化に向けて,股関節および腕にBLDCサーボモータを導入し,フルボディの2足ロボットを構築した.走行に関しては,従来浮いた走りとなり推進力の欠如が問題であったが,揺動慣性や広筋の予備緊張などにより,よりヒトに近い適切な床反力を実現し,実験者による介助なしで53歩の連続走行を達成した.3次元歩行に関しては,片麻痺患者や高齢者の歩行改善にも通じる躓かないことに着目し,足部支持パターンに基づく空圧アクチュエータの制御方式を提案し,これまでにない596歩の連続歩行を介助なしで達成した.なお,体幹部の揺動慣性,骨盤,さらに足部(ヒト足部から導かれた7関節・8筋)などを実験を通じて洗練化していった. 高速カメラを用いて2足ロボットの脚運動を撮影し,CNN(Convolutional Neural Network)を用いた操作スキルの深層学習モデルを獲得した.入力変数は画像,目標変数は股関節トルクで,それらの時系列データを教師データとして与えて学習し,推論実験を行った.なお,新たに開発した床面を円運動可能な深層学習用の実験環境を活用することで,効率的に実験・学習が可能となった.ハイパーパラメータの調整を適切に行うことで,外部環境(背景や照明状態など)にロバストな脚運動を生成し,期待した成果が得られた.なお,本成果は,トレッドミル上で歩行・走行する2足ロボットにも転用できると考えている(転移学習,強化学習).
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