研究課題/領域番号 |
19H02110
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
真下 智昭 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20600654)
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研究分担者 |
岡田 浩 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30324495)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロモータ / 超音波モータ / 圧電アクチュエータ / マイクロロボット |
研究実績の概要 |
マイクロ超音波モータの効率の向上を目的として,せん断変形を生じる15モード素子と,単結晶圧電材料であるPMN-PTの,二種類の圧電材料について検討を行った.15モード素子を用いたマイクロ超音波モータでは,Q値および結合係数の改善が見られ,モータを試作し,駆動実験を行ったところ,40μNm以上のトルク,2%以上の効率が得られた.これらは,従来のモータと比べて,約3倍の性能である.単結晶圧電材料PMN-PTを用いて,マイクロ超音波モータの試作を行ったところ,トルク,効率ともに,従来比約2倍の性能向上が観察された.いずれも15V程度の電圧で駆動できるようになり,発熱も抑えられることが確認された. マイクロ超音波モータに,マイクロギアを取り付けたマイクロギアードモータの試作を行い,このモータを用いて車輪型マイクロロボットの開発を行った.約10mmの大きさでも力強く動かすことのできるマイクロロボットである.実験では,ギアの出力トルクに対してロボットが小さく軽いためスリップを起こす問題が生じた.移動面に適切な摩擦係数の材料を用いることで,マイクロロボットは安定して駆動できるようになった.デモでは,斜面を準備し,移動性能の評価を行った. マイクロ超音波モータにプロペラを取りついた移動機構の開発も行った.高い回転数を必要とするため,マイクロ超音波モータをベンディングモードで駆動することを考案し,20000rpm以上の高速回転を得た.プロペラを取り付けて,短時間の浮揚にも成功したが,液中駆動にも使えるアイデアである. 扁平型モータを用いたマイクロハンドの設計開発を行った.試作したモータと機構で,小さいものであれば動かすことのできる出力が観察された.ハイスピードカメラを用いてこの機構を画像フィードバックするシステムの開発を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに,マイクロ超音波モータの効率向上の可能性を圧電解析と予備実験で示していた.今年度は,せん断変形を生じる15モード素子と,単結晶圧電材料であるPMN-PTの,二種類の圧電材料について,モータを試作し,質・量ともに十分な実験を行い,その可能性を検証できた.これらの実験は順調に進捗し,良い研究成果が得られている.他にも,新しいロータの設計やコーティングやメッキを行うことで,ステータとロータの接触面の改善による効率向上も取り組んだが,摩擦係数を適切に設定することが困難であり,この方法ではまだ十分な性能向上が観察できていない. マイクロ超音波モータにマイクロギアを取り付けたマイクロギヤードモータの開発を行い,このモータを用いた車輪型マイクロロボットの開発を行った.マイクロロボットの試作し,安定的に駆動することに成功している.試作機を用いて斜面を移動するデモを行い,優れた移動性能を示した.おおむね研究計画通りに研究は進んだ. マイクロ超音波モータを高速回転させるために,振動モードとして,従来の3波モードとベンディングモードの二種類について比較を行った.モータステータが長い場合は,ベンディングモードが有利になり,高い回転数を得られることを明らかにした.新しくベンディングモードを用いるマイクロ超音波モータを設計し,プロペラを取り付けて駆動実験を行い,短時間の浮揚にも成功した.研究の難易度は高いと考えられたが,こちらもおおむね予定通りに研究目標を達成することができた. マイクロハンドの部品の設計および扁平型超音波モータの試作をおこなった.電線とリンク部品を一体化するなど,電線による損失を減らす設計とした.扁平型モータを試作し,おおむね目標値の約40μNmのトルクを得ることができたが,モータの試作に時間がかかったため計画より少し遅れた.
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今後の研究の推進方策 |
マイクロ超音波モータ効率向上の研究では,せん断変形を生じる15モード素子と,単結晶圧電材料であるPMN-PTの,二種類の圧電材料について,それぞれ別に研究を行ってきた.今年度は,これらを組み合わせた,15モードを生じる単結晶素子を用いてマイクロ超音波モータを試作し,実験を行う.効率5%,モータトルク50μNm以上を目指す.ステータとロータの接触を効率向上のキーポイントだが,現在のステータは1mmと小さく評価が困難である.実験しやすいよう2mm角のものを試作し,ステータとロータの接触を最適化して,性能向上と出力安定化を目指す.さらにトルクを上げるために減速機の調査を行う.3Dプリンタを用いてマイクロギアを作製し,ギアボックスを組み立て,強度,ギア効率などを実験で調査する.サイズは,Φ2mm長さ2mmで,ギア比100を目指す. マイクロギアードモータを用いた車輪型マイクロロボットの研究をさらに進める.ギアードモータにはセンサを取り付け,複数個のマイクロ超音波モータを同期してフィードバック制御できるシステムの開発を行う.センサには2mm以下の小型のものを用いるが,原理として磁力式と光学式の二種類を比較し,それぞれの特徴を明らかにする.ギアードモータとセンサを取り付けたマイクロロボットを開発し,管内や狭あい部などの実験環境を準備し,デモを行うことで,移動性能を評価する. マイクロハンドの試作を行う.機構学的な解析を行い,モデルと実験結果を比較し,モデルを改善する.静力学的,動力学的な解析と実験を行う. 半導体集積化技術を用いて,モータを駆動するために必要な高周波発振器や昇圧回路を含むモータドライバを小型集積化する.窒化ガリウムを用いたトランジスタを用いた回路には,ノイズが残るため,今後ノイズを低減し,モータの駆動実験と評価を行う.
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