研究課題/領域番号 |
19H02120
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
津田 理 東北大学, 工学研究科, 教授 (10267411)
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研究分担者 |
宮城 大輔 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (10346413)
長崎 陽 東北大学, 工学研究科, 助教 (60823747)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超電導ケーブル / 洋上風力 / 高温超電導 / 交流損失 |
研究実績の概要 |
今年度は、低熱伝導層の導入が、三相同軸型超電導ケーブルの長距離化に適したケーブル内温度分布の実現に有効であることを実証するために、低熱伝導層の導入効果の検証に適したモデルケーブルの構成方法と実験方法を検討した。実際のケーブルでは、ケーブル長が10km程度の時に、内側冷媒流路入口付近が65Kであるのに対して外側冷媒流路出口付近が77Kになるが、これを数mのケーブル長で実現するには、外部からの侵入熱量を実ケーブルよりも桁違いに大きくする必要がある。しかし、実際のケーブルでは、低熱伝導層の径方向厚さが薄すぎると断熱効果が小さくなり、厚すぎるとケーブル表面積の増大により侵入熱量が増えるため長距離化には適さない。このトレードオフの関係を検証するには、低熱伝導層の導入厚さによって、ケーブル出入口やケーブル内部の温度を大きく変化させる必要があるが、これには、モデルケーブル径を10mm以下にし、モデルケーブルにおける冷媒への伝達熱量を増やす目的で、外側冷媒流路外側の真空断熱層を設けず、冷媒の流速を、実際のケーブルよりも桁違いに遅くする必要があることがわかった。また、このような遅い流速の制御は、ポンプでは難しく、モデルケーブルの外側冷媒流路出口より放出される液体窒素を気化させ、気化した窒素ガス量を、流量調整弁で制御することが有効であることがわかった。さらに、外側冷媒流路と内側冷媒流路間の等価的熱伝導率が、低熱伝導層の導入の有無により大きく異なる必要があるが、この実現には、低熱伝導層の他に、高熱伝導率のアルミ層を設けることが有効であることがわかった。以上を踏まえ、65Kの過冷却窒素の生成、モデルケーブル出入口での温度測定、モデルケーブル内の液体窒素流量の測定を可能にする試験装置を設計し、製作を試みた。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により部品の調達が遅れ、完成は令和3年度となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、ケーブル内部における温度制御技術開発とモデルケーブルを用いた革新的ケーブル化技術の検証を行う予定にしていた。ケーブル内部における温度制御技術開発においては、三相同軸型超電導ケーブルの内側冷媒流路と外側冷媒流路の間でかつ、導体層の内側に低熱伝導層を導入することにより、ケーブル外表面からの侵入熱と導体層で発生するジュール熱が内側冷媒流路の冷媒に伝達することによる、外側冷媒流路入口付近での液体窒素の温度上昇を抑制し、ケーブルの長距離化に適したケーブル内温度分布を実現できることを明らかにしている。また、低熱伝導層の導入がケーブルの長距離化に有効であるものの、低熱伝導層の径方向厚さが厚くなりすぎると、ケーブル外径が大きくなり、外部からの侵入熱量が大きくなるために冷媒温度が上昇しやすくなり、ケーブルの長距離化の妨げになることも明らかにしている。この様に、予定通り検討を進めることができている。一方、モデルケーブルを用いた革新的ケーブル化技術の検証においては、低熱伝導層の有効性を実験的に検証するための数m長のモデルケーブルについて検討し、低熱伝導層の導入効果を評価するのに適したモデルケーブルの構成方法と実験方法を明らかにしている。そして、同モデルケーブルにおける低熱伝導層の導入効果を検証するための試験装置の設計・製作を実施している。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、装置用の物品調達が滞り、今年度中に試験装置の製作を完了させることができなかった。このため、同試験装置の製作を翌年度(令和3年度)に延期せざるを得なくなり、予定していた検討項目を全て完了させることができなかった。以上より、当初の計画よりは、やや遅れている、という評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度完了させることができなかった、モデルケーブルを用いた低熱伝導層の導入効果の有効性検証を行うための試験装置の製作においては、調達に時間を要する部品の調査を行い、代替可能な部品については、納期に応じて変更する予定である。また、主要部品の調達が困難な場合は、試験装置の構成についても見直す予定である。この際には、改めてモデルケーブルを用いたケーブル内温度分布解析を繰り返し行い、低熱伝導層の導入効果を検証可能な別のケーブル構成方法や試験実施方法を明確にする。また、低熱伝導層を構成する材料については、大量生産されていないため、入手可能な量が限定されている。このため、モデルケーブルの製作に必要な量を確保できない場合は、同様の低熱伝導効果が得られる材料について検討する。そして、十分な厚さの低熱伝導層を構成できない場合は、モデルケーブルの構成方法や製作方法を見直す予定である。
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