(1)等方性Fe系ナノ結晶合金扁平粉末の複素透磁率を評価した結果、扁平粉末単体の比透磁率は60~80程度であり、扁平粉末積層構造によって個々の扁平粉末の反磁界がキャンセルされて高透磁率化する機構が明らかになった。また、10MHz以下の周波数で磁壁共鳴によると思われる複素透磁率の虚部ピークが観測され、異方性扁平粉末に対する180°磁区回転磁化励磁は磁壁共鳴をともなわずうず電流損の低減に有効であるという本研究の動機を裏付ける結果が得られた。 (2)等方性Fe系ナノ結晶合金扁平粉末積層コンポジットシート磁心を採用した10MHz動作Buckコンバータ用結合インダクタを試作し、10~20MHzにおいて40以上のQ値が得られることを実証した。扁平粉末の異方性化によりさらなるインダクタの高Qが可能になると考えられる。 (3)異方性扁平粉末の出発材料として20μm厚Co-Pd置換Fe系ナノ結晶合金(Fe73.5-x-y Cox Pdy Si16.5 B6 Nb3 Cu1 at.%)薄帯を作製し、異方性の誘導と磁気特性の評価を行った結果、Co置換量;x=3.63 at.%、Pd置換量;y=0.37 at.%の材料は既存のFe系ナノ結晶合金(Fe73.5 Si16.5 B6 Nb3 Cu1 at.%)に対して100kHz以上の透磁率の低下を大幅に改善できるとともに(1MHzにおける比透磁率を2000から4000に向上)、鉄損を60%低減できることを明らかにした。これまでに確立した扁平粉末積層コンポジットシート磁心作製プロセスに1μm~数μm厚のCo-Pd置換Fe系ナノ結晶合金扁平粉末を導入することで、Beyond MHz帯ベンチマーク磁心のNi-Znフェライトやセンダスト(Fe-Al-Si)扁平粉末積層コンポジットシート磁心を大幅に凌駕する高透磁率・低鉄損磁心に目途をつけた。
|