研究課題/領域番号 |
19H02129
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
高島 和則 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60303707)
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研究分担者 |
小口 達夫 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90324491)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電気集塵 / 微粒子 / 再飛散 / 凝集 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は電気集塵装置内において導電性微粒子が捕集と再飛散を交互に繰り返しながら凝集するメカニズムを、粒子径や粒子表面の付着性等の粒子の性質および、電界強度や粒子とイオンとの衝突過程等の電気集塵装置の運転条件の解析に基づき明らかにし、粒子の凝集・粗大化機構の理解に基づいて、これを利用して広い範囲の粒径を持つ導電性粒子を低圧損・高効率で捕集する新規手法の実証研究を行うことである。 2021年度は電気集塵機の放電電極と集塵電極の間の任意の位置から試料ガスをサンプリングし、粒径分布をリアルタイムに測定する実験系を構築した。構築した実験系を用いて、ディーゼル排ガスを電気集塵した際の粒径分布を測定した。その結果、電気集塵によって処理された排ガスには処理前の排ガスとは異なるサイズの微粒子が含まれることが分かった。ディーゼルエンジンから排出された排ガスは60nm程度に単一のピークを有する粒径分布を示したが、電気集塵装置を通過した排ガスでは元のピークが消失し、より大きな粒径とより小さな粒径に新たなピークが出現した。元の粒径よりも大きな粒径のピークは電気集塵によって捕集された微粒子の一部が凝集しながら再飛散することによって生じた可能性を示唆している。また、もとの粒径よりも小さな粒径のピークの存在は、電気集塵で用いられるコロナ放電によって排ガス中に含まれているガス状の成分から微粒子が生成された可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
排ガス中に含まれる微粒子の粒径分布が電気集塵によってどのように変化するかをリアルタイムに計測する実験系を構築した。ディーゼル実排ガスを用いた実験より、電気集塵装置を動作させた場合にのみ、排ガス中にもともと含まれていた微粒子とは異なるサイズの粒子が生成されていることを見出した。電気集塵により粗大化した粒子が再飛散されることおよびコロナ放電により誘起される化学反応によって気体成分からナノメートルサイズの微粒子が生成する可能性が示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は実際のディーゼル排ガスに対してモデル電気集塵装置を用いて電気集塵装置への印加電圧をパラメータとして微粒子の捕集特性を調べた。本年度は昨年度に引き続き、電気集塵による微粒子凝集過程を実排ガスを用いて実験的に調べる。昨年度から検討を開始した印加電圧の影響に加えて、電気集塵装置および排ガスの様々な条件について網羅的に微粒子凝集過程との関係を調べるとともに、得られた知見を総合して微粒子の凝集をコントロールするための手法を見出すことを目指す。 (1)排ガスおよび電気集塵装置のパラメータが微粒子凝集へ及ぼす影響の網羅的解析 ディーゼル排ガスの電気集塵による微粒子の凝集は、粒子どうしの衝突およびコロナ放電による微粒子の付着性の変化の影響を受ける。また、自動車用のエンジンでは負荷の変動に伴って微粒子の濃度や形状、粒子表面の組成も様々に変化するため、電気集塵側の条件だけでなく、粒子側(排ガス側)の条件によっても影響を受けると考えられる。そのため、本年度はこれらのパラメータが粒子の凝集過程に及ぼす影響についてできる限り網羅的に解析を行う。 (2)微粒子の再飛散や凝集を制御する手法の発見 上記(1)に示した様々な要因の解析によって、微粒子(排ガス)の性状に合わせて電気集塵の条件を動的に変化させることで電気集塵に伴う再飛散を抑制することが可能であるか検討を行う。再飛散自体を抑制することができないことが明らかになった場合は、再飛散粒子の凝集を制御することが可能であるか検討を行う。物理的フィルタによる再飛散粒子の捕集のためには再飛散粒子をできるだけ凝集させ、大径化することが有効である。また、フィルタ上に堆積した粒子が稠密な層を形成しないようにできるだけ高度な分岐構造を持つ嵩高い凝集体を形成させることも有効であると考えられる。そのような条件を見出すことが可能か実験的な検討を行う。
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