ディーゼル排ガス微粒子は導電性であるため、電気集塵装置内において捕集と再飛散を繰り返し生じる。その結果、電気集塵装置から凝集した粒子が排出されることが実験により確かめられている。本研究は、電気集塵装置内部におけるディーゼル排ガス微粒子の捕集および再飛散の挙動を実験的に調べ、微粒子の凝集を支配する電気集塵や微粒子の性状などに関する条件を探索し、微粒子の凝集・粗大化を利用して広い範囲の粒径を持つ導電性粒子を低圧損・高効率で捕集する新規手法の実証研究を行うことを目的としている。 2022年度は集塵電極上の様々な位置からサンプリングした粒子のSEM観察を行い、微粒子の凝集状態を調べた。電気集塵装置の出口においてガス流に対して垂直に設置した導電性両面テープ上への粒子の衝突を利用したSEM観察用サンプル作成を試みたが、SEM観察可能なサンプルを得ることができなかった。そこで、集塵電極上に設置した導電性両面テープ上に粒子を捕集し、真空加熱脱ガス処理を行った後、オスミウムコーティングすることによってSEM観察用サンプルを作成した。 その結果、電気集塵装置を動作させていない場合は観察される微粒子の個数は少ない一方、電気集塵装置を動作させた場合は直径数10nmの比較的サイズの揃った微粒子およびそれらと比較して明らかに大きく、様々なサイズと様々な形状を有する粒子が観察された。前者は Engine Exhaust Particle Sizer(EEPS) Spectrometer によって測定された粒子の流体力学的直径と整合的であること、後者の表面形状は数10nm程度の凹凸を示していたことから、後者は前者の凝集体であることが示唆された。
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