研究課題/領域番号 |
19H02131
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
三浦 友史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (90354646)
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研究分担者 |
劉 佳 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00791922)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 半導体変圧器 / 仮想同期発電機制御 / MMC / DAB |
研究実績の概要 |
本研究では,仮想同期発電機制御を適用した半導体変圧器について検討を進めている。対象となる半導体変圧器は,高圧側はモジュラーマルチレベル変換器(MMC)を介して電力系統に連系し,直流側は絶縁型直流/直流変換器(DAB)を直列接続して降圧する。そして低圧側直流部には双方向直流変換器を介して電力貯蔵装置を接続することによって,電力変動補償に必要なエネルギーを供給する構成となっている。 2020年度は半導体変圧器に特有な電力制御である「順潮流・逆潮流」,「高圧側電力変動補償・低圧側電力変動補償」の組み合わせによる4種類の運転状態に対して要求される仮想同期発電機動作を回路シミュレーションによって確認した。すなわち,連系された高圧側の電力系統にじょう乱が発生した場合には電力貯蔵装置からエネルギーを供給し系統に対して慣性サポートを行い,低圧側の負荷が変化した場合にも電力貯蔵装置がエネルギー変動を吸収することによって低圧側電力変動を補償し高圧側電力系統に影響が及ばないようにする動作を,順潮流(低圧側負荷へ電力供給)・逆潮流(高圧側系統に電力供給)の2つの潮流方向の状態において実現えきることを確認した。また,必要とされる電力貯蔵装置の容量についても評価した。ただし,回路シミュレーションは,半導体変圧器のMMC部を一般的な三相インバータで模擬し,DABは1段の構成に簡略化して行っている。これらの検討結果については,9月開催の半導体電力変換研究会において報告した。 一方,実験装置については,電力貯蔵装置の代わりに直流回生電源をもちいて双方向チョッパとインバータを組み合わせて,1 kW級の装置において仮想同期発電機発電機動作を順潮流,逆潮流の2つの状態において確認した。またMMCを構成するため,フルブリッジセルを構成する単相インバータ回路を製作して,各セルの基本的な動作について確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮想同期発電機制御を適用した半導体変圧器の動作について基本的な動作を回路シミュレーションによって確認した。双方向の潮流において,電力変動の補償ができることを示し,必要な電力貯蔵装置の容量についても推定している。現在,単位慣性定数H,制動係数D,制動の積分ループの時定数などの主要な設定パラメータによって,周波数の変化率RoCoFや最大周波数変動幅,補償エネルギー量などの評価量がどのように変化するかを明らかにし,設定パラメータの設計手法について検討を進めている。さらに,半導体変圧器の慣性サポート動作の限界についても考察を進めており,装置特有のメリット,デメリットについて検討している。 試験装置については,まず電力貯蔵装置を直流回生電源で代替し,MMCを三相フルブリッジインバータに簡略化した回路構成によって仮想同期発電機動作を確認することを進めている。一方で,MMC用の単相セルインバータについても複数台製作し,MMCの回路シミュレーションとともに,その動作について検討を進めている。さらにDABについても回路シミュレーションによる動作検証に加え1 kW級の回路設計が終了しており,製作を進めている。今後,それらの組み合わせ試験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
半導体変圧器に実装する仮想同期発電機制御の設定パラメータについて,実際に製作する小型試験装置をベースに設計を継続して進める。仮想同期発電機制御された半導体変圧器に要求される仕様をさらに明らかにし,実スケールの半導体変圧器が必要とする電力貯蔵装置の容量について設計指針を検討する。 試験については,インバータ,DAB,双方向チョッパの各回路の単体試験の後,組み合わせ試験を行い,電力系統を模擬した三相電源に接続し,電力系統の慣性サポート動作を1~数kWの実験によって確認する予定である。MMCについても現在回路シミュレーションを進めており,DSPの制御プログラムに変換して,実装する予定である。
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