研究課題/領域番号 |
19H02145
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
淡路 祥成 国立研究開発法人情報通信研究機構, ユニバーサルコミュニケーション研究所, 研究統括 (50358876)
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研究分担者 |
小島 一信 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30534250)
吉田 悠来 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 主任研究員 (50573036)
秩父 重英 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80266907)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光無線通信 / 深紫外LED / 窒化物光半導体 / ソーラーブラインド / 5G |
研究実績の概要 |
初年度においては、ギガビット級ソーラーブラインドLED通信の実証として、屋外光無線伝送実験を行った。280nm帯 AlGaN LEDを用いた送信機と、シリコンAPD(avalanche photodiode)と紫外帯バンドパスフィルタを用いた受信機を、陽光の影響を最大化するため鉛直方向に設置した系において、真夏の炎天下においても終日1Gbps超の伝送が可能であることを明らかにした。実験結果をもとに、光受信機の感度及びソーラーブラインド性の向上に向け、ガイガーモードAPDアレー(MPPC)など、異なる光検出器を用いた受信機を試作し、性能評価・比較検討を開始した。例えば、MPPCを用いた受信機では、拡散光を用いた屋内見通し内通信実験において、300Mbps超の良好な伝送特性をすでに得ている。 一方、可視光帯LED通信では、デバイスサイズに起因する寄生容量が現実的な帯域制限要因となる場合が多く、高速化に向けては、マイクロLEDなど、デバイスの小型化が主に議論されてきた。この傾向は深紫外帯LED通信の先行研究においても見られるが、興味深いことに、我々が伝送実験に使用したデバイスは同サイズのInGaN系青色LEDや深紫外AlGaN LEDと比較し、応答速度が一桁以上高速であることが明らかになってきた。当該LEDでは、外部量子効率向上のためマクロステップ構造をもつAlN/サファイアテンプレートが用いられているが、顕微エレクトロルミネセンス測定の結果、このようなマクロステップに起因したサブミクロンスケールの局所的な電流路形成および発光が確認された。電流路の局在による、自己形成的なマイクロLED構造が応答速度の向上に寄与していると考えられる。 以上、初年度においては、日中陽光下におけるギガビット級ソーラーブラインド伝送の実証に成功するとともに、化合物光半導体物性としても新たな発見があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に述べた通り、初年度においては、日中陽光下におけるギガビット級ソーラーブラインドLED通信の実証実験に成功し、また、実験結果をもとに性能向上に向けた新たな光受信機を試作、特性評価を開始した。一方、半導体光物性においても、マイクロステップ構造に起因する自己組織的なマイクロLED構造の形成という、深紫外LEDの高速応答のカギと考えられる新たな光物性を発見した。以上により、研究開発はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度においては、初年度おいて試作したソーラーブラインド受信機について、それぞれの光学設計や変復調・通信路等化に係る信号処理技術の最適化を行い、陽光下での伝送実験を通じて、それぞれのユースケースをより定量的に検討する。また、深紫外帯波長多重伝送やMIMO伝送、あるいはセンサー応用について基礎検討を開始する。一方、初年度において発見された、AlGaN LEDの高速応答性のカギと考えられる自己組織的なマイクロLED構造の形成についてより定量的な評価を行う。
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