研究課題/領域番号 |
19H02146
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平田 拓 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (60250958)
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研究分担者 |
稲波 修 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10193559)
安井 博宣 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10570228)
松元 慎吾 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (90741041)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電子スピン共鳴 / 酸素分圧 / pH / イメージング |
研究実績の概要 |
電子スピン共鳴(ESR)スペクトルから酸素分圧とpHを求めて三次元画像を再構成する計算コードを開発した。米国ウエストバージニア大学V. V. Khramtsov教授のグループから提供されたpTAM分子プローブを用いて、ESRスペクトル線形が酸素分圧とpH、リン酸濃度にどのように変化するか明らかにした。室温において、pTAMプローブの酸素分圧依存性は0.049 マイクロT/mmHg、酸解離定数pKaは6.81(95%信頼区間 6.78-6.84)であることを明らかにした。 ESR分光学的な基礎データが得られたため、4次元スペクトル空間イメージング法を用いて酸素分圧とpHの三次元イメージングを試みた。測定試料として、(1) 酸素分圧 0 mmHg、pH 6.84、(2) 酸素分圧 19 mmHg、pH 6.77、(3) 酸素分圧 38 mmHg、pH 6.95に調製した水溶液(各1.2 mL)を3本のガラス管に入れた。7.5分の測定で3375個のプロジェクションデータを取得し、画像再構成を行なった。3D空間におけるスペクトルの再構成の後、各ボクセルでスペクトルのパラメータを取得し、得られたパラメータを酸素分圧およびpHに変換した。再構成された酸素分圧とpHの3D画像は、中央値で良い一致を示していたが、値のばらつきが見られた。再構成された3D画像において、酸素分圧の標準偏差は7 mmHg、pHの標準偏差が0.05であった。プロジェクションデータを4回積算すると、これらの値は酸素分圧の標準偏差5 mmHg、pHの標準偏差0.01に低下した。これらの成果は、英国王立化学会の分析化学分野の専門誌The Analystに掲載された(A. Taguchi et al., Analyst (2020), DOI: 10.1039/d0an00168f)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に予定していた酸素分圧およびpHの同時イメージングに成功したことが、「概ね順調」に進展していると判断した根拠である。既に、英国の専門誌に同時イメージングに関する研究成果を発表しており、1年目から研究成果の発表に結びついたことも「概ね順調」と考える根拠である。しかし、目標とする計測分解能に到達していないことから、計画以上に進展したとは言えない。また、当初の計画では、腫瘍モデルを用いた分子プローブの投与実験も計画していたが、その面での進展は不十分であった。そのため、計画以上に進展したとは言えないが、「概ね順調」に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
酸素分圧およびpHの同時イメージングが実現したことから、予定通り次の研究項目を進めていく。具体的には、マウス腫瘍モデルの同時イメージングに先立ち、酸素分圧およびpHイメージングを独立に行い、同時イメージングを実施する際の基礎データを取得する。また、ウエストバージニア大学においてpTAM分子プローブの改良が行われていることから、新しいpTAM分子プローブが提供された際には、新しいプローブの生体内薬物動態と腫瘍内分布を明らかにする。動物実験に加えて、酸素分圧の計測精度改善を試みる。具体的には、高周波共振器の雑音を低減することにより、ESRスペクトルの信号対雑音比の改善を行う。また、マグネットの磁場均一度の影響を明らかにし、磁場の不均一性が酸素分圧の計測に与える影響を低減するように試みる。これらの技術改良により、目標とする酸素分圧の計測分解能(5 mmHg)の実現を目指す。
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