研究課題/領域番号 |
19H02150
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
荒川 貴博 東京工科大学, 工学部, 准教授 (50409637)
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研究分担者 |
三林 浩二 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (40307236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオセンサ / イメージング / 酵素 / 生体ガス / 連続計測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、疾患・代謝により呼気や皮膚表面から放出される生体由来ガスに含まれる揮発性化学情報の高感度かつ選択的な画像化(イメージング)するシステムの実現を目指している。研究計画に基づき研究を推進し、当初の目的を十分達成することができた。2021年度は要素技術のイメージングシステムの構築に向けた酵素反応系の評価と酵素固定化担体の材料の選定と固定化法、イメージングシステムの基礎検討について評価を行い、研究を実施した。 アセトンを触媒する酵素として、二級アルコール脱水素酵素(secondary alcohol dehydrogenase:S-ADH)について評価を行った。高感度化と酵素固定化に関する検討を実施し、さらに酵素固定化の条件を最適化することでイメージングシステムとして評価を行い、生体成分を用いた評価実験を実施した。酵素固定化用の材料として、反応性官能基を有するグルタールアルデヒドを用い、固定化について評価した。フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて、担体に対する官能基の状態を評価、高解像度の顕微鏡を用いてイメージング使用前後の酵素膜の状態を評価し、連続的なイメージングの実現することに成功した。 生体触媒である酵素を利用したイメージングでは、酵素の分子認識能はタンパク質の熱変性、長時間使用、反応生成物の影響により活性が低下、失活してしまう影響がある。そこで温度管理や試薬循環によりタンパク質の機能の維持を目的としたマイクロ流体システムでの実験系を構築した。反応試薬、酵素機能、出力の安定化に関わる緩衝液を供給できるような並列マイクロ流路とイメージングに用いるバイオセンサを一体とした系を構築し、評価を行った。 現在のところ、全体の実験計画の予定はおおむね順調に進展しており、これまでの研究成果を海外の学術論文誌に掲載することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は要素技術確立(2019~2021年)、要素技術を集積化・機能化したイメージングシステム構築(2020~2021年)と疾患スクリーニングへの応用(2021~2022年)のスケジュールで研究を進めている。2021年度は要素技術のイメージングシステムの構築に向けた酵素反応系の評価と酵素固定化担体の材料の選定と固定化法、イメージングシステムの基礎検討について評価を行い、研究を実施した。 アセトンを触媒する酵素として、二級アルコール脱水素酵素(S-ADH)を用いた。この酵素を用いたアセトンの還元反応を利用した可視化システムの構築を行った。酵素をコットン製のメッシュ担体に固定化するため、グルタールアルデヒド溶液をメッシュ担体に滴下し、乾燥させ、S-ADH膜を作製した。H-PTFE膜の孔径と膜厚によるNADH溶液の保持能力やガス負荷による膜乾燥への影響を調べ、Millipore製の孔径10 um膜厚85 umのH-PTFE膜を用いることで、比較的良好なアセトンガスの可視化計測が可能であった。 最適化された条件にて酵素を固定化したメッシュを暗箱内に設置し、呼気中に含まれるアセトンガス濃度を含む10 ppb-2.0 ppmのアセトン標準ガスを負荷し、ガスのイメージングを行った。標準ガスイメージングシステムとして定量性、感度を評価した。ガス負荷に応じた出力上昇と濃度に応じた蛍光強度とピーク値が観察された。蛍光強度の定常値と微分解析のピーク値からアセトンガス濃度に対する定量性を調べたところ、蛍光強度・微分解析の両方において低濃度でのアセトンガスの検出が可能であった。本システムでのアセトン濃度に対する定量範囲は、健常者の呼気中アセトン濃度(200-900 ppb)を含む、0.05-2.0 ppm(R = 0.999)を実現した。研究計画に沿って、順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで構築した要素技術であるイメージングシステムを用いて、マイクロ流体システムを利用したバイオセンサの検討を実施する。長時間安定評価が可能な生体ガスイメージングデバイスを作製する。生体での応用研究として、疾患スクリーニングを目指した研究を実施する。 アセトンを触媒する酵素として、二級アルコール脱水素酵素(S-ADH)について評価を行った。高感度化と酵素固定化に関する検討を実施し、さらに酵素固定化の条件を最適化することでイメージングシステムとして評価を行い、生体成分を用いた評価実験を実施したところ、呼気に含まれる微量のアセトンガスのイメージングに成功した。今後は、イメージング装置を用いて被験者による呼気などの生体ガスのイメージングを評価し、生体計測における本装置の有用性を確認する。 生体触媒である酵素を利用したイメージングでは、酵素の分子認識能はタンパク質の熱変性、長時間使用、反応生成物の影響により活性が低下、失活してしまう影響がある。そこで温度管理や試薬循環によりタンパク質の機能の維持を目的としたマイクロ流体システムでの評価を継続して実施する。 分担者と共同で、開発したセンサの特性評価、生体での評価を連携して行う予定である。分担者の研究室に訪問し、バイオセンサで使用する酵素などの材料について議論を行い、さらなる改良を行う。 さらに、開発している小型のカメラや小型デバイスを使用したモバイルイメージングシステムを継続して評価を進め、ベッドサイドやスクリーニング検査を目指したシステムの構築を進める。今後の研究では、被験者による生体ガス計測を実施し、研究論文の発表や展示会での研究成果の紹介についても実施する。
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