研究課題/領域番号 |
19H02153
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
田中 三郎 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 教授 (10271602)
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研究分担者 |
有吉 誠一郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20391849)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高温超伝導 / ジョセフソン接合 / FIB / シャピロステップ / YBCO |
研究実績の概要 |
HTS-SQUIDでは、コヒーレント長(超伝導性のしみ出し距離)が1nmと短いことから、現状では、結晶軸に傾角を持たせて貼り合わせた特殊基板上に成膜して、粒界型接合(JJ)としている。従って、特殊基板の貼合わせライン上にしかJJを作製することができず、SQUIDの設計に大きな制限がある。我々はJJの作製法を見直して“新粒界型JJ”を開発することで磁束ノイズが一桁小さいHTS-SQUIDを実現することを目指した。 初年度はYBCO超伝導薄膜をレーザ蒸着法でこれまで出来ていなかった100nmで臨界温度が80K以上の薄膜を作製する技術を確立した。その薄膜を上にFIB装置を用いて、数nm幅のイオンビーム描画によって、局所的に酸素欠損を導入してJJを形成し、臨界電流のナノブリッジ幅および照射量依存性を調べた。その結果から、ナノブリッジ幅および照射量に対応した臨界電流の低下を確認した。ナノブリッジ幅500 nmでは照射量1.0×10E16 [ions/cm2]で超伝導特性を失い、ナノブリッジ幅1000 nmでは照射量1.0×10E17 [ions/cm2]で超伝導特性を失った。ナノブリッジ幅500 nm、照射量2.0×10E15 [ions/cm2]では、臨界電流を1.7 mAから0.17 uA(減少率90%)まで低下することが確認できた。現状での最適条件で作製したナノブリッジのI-V測定を行うと同時に、ナノブリッジに2 GHzの高周波をバイポーラアンテナを介して印加することでシャピロステップの確認を行った。実測値では1つ目のステップ、4.1 uV、2つ目のステップ、8.0 uVを確認した。これらの値を理論値と比較して、ほぼ同等のステップが得られていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定のジョセフソン接合の低ノイズ化を進めることが出来た。臨界温度が80K以上の100nm厚さのYBCO薄膜作製や、FIB条件の検討を進めることで、ジョセフソン接合特有のマイクロ波照射によるシャピロステップの確認ができており、概ね順調に推移していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
HTS-SQUIDでは、コヒーレント長(超伝導性のしみ出し距離)が1nmと短いことから、現状では、結晶軸に傾角を持たせて貼り合わせた特殊基板上に成膜して、粒界型接合(JJ)としている。従って、特殊基板の貼合わせライン上にしかJJを作製することができず、SQUIDの設計に大きな制限がある。また、粒界型JJを用いたHTS-SQUIDでは標準的な磁場分解能(小さいほど優れる)は50~100fT/√Hzと比較的大きい。我々我々はJJ の作製法を見直して“新粒界型JJ”を開発することで磁束ノイズが一桁小さいHTS-SQUIDを実現することを目指す。初年度にYBCO超伝導薄膜をレーザ蒸着法で作製し、FIB装置を用いて、数nm幅のイオンビーム描画によって、局所的に酸素欠損を導入してJJを形成し、その特徴であるシャピロステップを観測することができた。 今年度はドーズ量等のイオン照射条件やイオン種を変えて慎重に実験を行い、最適条件を探索して粒界制御技術を確立し、SQUIDの作製を行う。NMR信号の取得に関しては、分極法を検討すると共に、新たに深部温度とT1緩和時間との関連を調査していく。
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