研究課題/領域番号 |
19H02154
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水谷 康弘 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40374152)
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研究分担者 |
高谷 裕浩 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70243178)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光スピンホール効果 / エリプソメトリ / 表面粗さ計測 / 超薄膜計測 / 光弾性計測 / 残留応力測定 |
研究実績の概要 |
申請課題を達成するために,理論的な基礎検討と光学的な検討を実施した.具体的には,光スピンホール効果を定量的かつ高精度に評価するために,光学系の設計を行った.ここでは,想定している被測定物体の必要精度の見積もりから,測定に要求される精度とそれを達成するための光学系(レンズや偏光子,配置距離の仕様)を検討した.また,ラスタスキャン方式の導入を行い,2次元での測定が可能であることも実験的に明らかにした. 具体的には,測定に必要な光学素子(レンズおよび偏光子)の仕様を検討し,原理確認として一般的な光源(He-Neレーザ)を用いた.また,光検出器には12bitのCCDカメラを用いた.まず,被測定物体をガラスとして測定を行った.その結果,サブナノオーダの表面粗さを測定できる可能性が見いだされた.この測定精度は,当初想定したいたよりも高精度な測定が可能であったた.そこで,被測定物体の保持ステージに自動ステージを導入しラスタスキャンを行うこととした.そして,計画していた予定を変更し他の手法との比較を行うことで測定の信頼性の確認も行った.その結果,ガラス研磨に起因するサブナノオーダの粗さおよび内部の残留応力,さらには,水分子の付着などを10mmの範囲でサブナノオーダの精度で検出できることが分かった.これらの結果は,当初想定していた測定精度を遙かに上回る精度であり,そのために,原子間力顕微鏡を導入し,被測定物体の幾何形状の比較測定も実施した.以上の取り組みを通じて,学会等での報告も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は,計画達成に必要な精度を達成するために,光学設計を再検討する予定であった.しかしながら,ラスタスキャン方式を導入し2次元測定に拡張することにより,本提案手法の利点が明確になった.ここでは,従来の測定法では確認することが不可能であった現象を測定する画期的な成果が得られたためである.すなわち,本申請課題で当初想定していた精度を遙かに超えた精度を容易に実現できることが分かったためである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに,面分布測定を行うことで,提案手法が高精度かつ安定的に測定ができることが分かった.しかしながら,測定不確かさなど測定精度の定量評価がまだ不十分である.また,当初予定してた表面粗さ計測への応用だけでなく,水分子の付着などを検出できる新たな展開を見込めることも分かった.そこで,今後は,それらの定量評価法の確立と新規応用開拓を中心に取り組んでいく予定である.具体的には,以下の通りである. 測定精度の不確かさ評価のために以下の取り組みを行う.まず,現在構成している光学素子の不確かさを明確にする.例えば,レンズの焦点距離や表面形状,偏光子の偏光特性の評価を行う.また,本測定法は,被測定物体に対して斜めの角度から測定光を導入するため,測定装置全体の角度精度の補償も行う.さらには,検出器の強度分解能やノイズの評価も実施する.そして,前年度導入した標準あらさ試験片などをもちいて比較測定も行いながら実現する予定である. 新規応用科委託では,測定環境下での湿度の影響を受けることから派生して被測定物体に付着する水分子の付着量の定量評価を行う.被測定物体の幾何的な形状を明らかにした上で,申請課題の測定法の結果との差分を測定することで水分子層の厚さを定量的に明らかにする.ここでは,原子間力顕微鏡による幾何的形状の評価が必要不可欠であり,また,測定プロトコルを固定化する必要もある. 以上の取り組みを通じて,本申請課題の信頼性の向上と新規応用開拓を実施する予定である.
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