研究課題
2021年度の研究実績は、大きく分けて以下の3点となる。(1) まず、多人数が密集した場合に生じる遮蔽問題を解決する手法を開発した。同手法では、従来の単一レーダによる計測ではなく、複数レーダ装置を同時に運用し、それらレーダからの信号を統合する点が特徴である。同手法の性能評価実験では、3台のレーダによる複数人の同時計測を行った。1台のレーダのみでは遮蔽により計測不能の対象者が存在する場合においても、複数レーダを用いることで、遮蔽の問題を回避し、多くのケースで全員の計測が可能となることを示した。また、この手法では、複数レーダどうしの相対位置や相対角度が未知であった場合にも使用できる。複数レーダのうち2台のレーダにより、少なくとも2人の対象者が同時に計測されていれば、プロクラステス解析により、相対位置・角度を自動的に推定し、データ統合が可能となる。さらに、同手法では、複数レーダで同時に計測されている対象者については、計測可能なレーダのうち周期性が最も高いものを自動選択するため、呼吸計測精度の大幅な改善も実現された。(2) 次に、アレイレーダによる電波イメージングと多次元クラスタリング法を統合し、移動を伴う対象者にも適用可能な非接触計測法を開発した。同手法は、対象者が移動を行う場合であっても、移動後に静止したことを検知し、体表面の周期的な呼吸変位を検出する手法により、継続的に生体信号の計測が可能となった。(3) さらに、各人体の複数部位を同時計測する際の信号分離精度を改善するブラインド信号分離手法を開発した。同手法では、皮膚変位波形どうしの関係を少数のパラメータのみで表現できる数理モデルを導入し、信号分離精度を大幅に改善できることを示した。信号分離精度の評価には、レーザ変位計との同時計測により得られた参照データを用いた。
1: 当初の計画以上に進展している
研究は当初の計画どおりに進捗している。それに加え、民間企業との連携により、本研究課題で開発した非接触生体計測技術の社会実装を進めている。本課題で開発した技術の一部は、2021年2月に販売開始した非接触見守りセンサに搭載されているところであるが、2021年度に新たに得られた成果をもとに、次期製品化に向け、さらなる性能改善を進めている。さらに、非接触の人体計測に伴い生じうる倫理面の課題を解決すべく、本研究課題の代表者が副代表を務める非接触見守りコンソーシアムの枠組みで非接触見守りセンサ倫理検討委員会を発足した。以上のとおり、当初の計画以上に進展していると判断できる。
これまでに開発された技術を統合し、複数人体・複数部位の同時計測により可能となる個人識別と生体情報モニタリングの性能を定量的に評価することが重要である。統計的に十分な数の被験者が参画する実験を通じ、個人特有の性質を考慮した客観的な性能評価を行い、システムのさらなる改善を行い、本研究課題の目標を達成したいと考える。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 産業財産権 (2件) (うち外国 2件)
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