研究課題/領域番号 |
19H02160
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
岩崎 誠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10232662)
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研究分担者 |
前田 佳弘 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70769869)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メカトロニクス / モーションコントロール |
研究実績の概要 |
〔負荷軸角度センサによるフルフィードバック2自由度位置決め制御系の設計と実証実験〕 2020年度では,19年度に引き続いて供試2軸水平スカラロボットに対するフルフィードバック2自由度位置決め制御系の設計と実機実験検証および 特性解析を行い,次年度以降の課題である,センサ新規開発による制御性能の向上への展開を準備した。 本研究で用いる2軸水平スカラロボットでは,申請者らが科研費(基盤研究C:H28~30年度,課題番号16K06413)にて開発した負荷軸角度センサを設 置した減速機内蔵型アクチュエータを導入し,従来のロボット制御では困難であったフルフィードバック制御系を構成した。この負荷側センサの併用を前提に,以下を実施した。 1.対象ロボットに対するLagrange方程式ベースの物理モデルに対して,遺伝的アルゴリズムによる最適化を併用してモデルパラメータを同定し ,精密モデリングとした。 2.上記精密モデルに基づき,フルフィードバック2自由度制御系を,負荷外乱からモータ角度までの感度特性と目標値追従特性をH∞補償器設計の混合感度問題の枠組みにより,感度仕様を満足可能なフィードバック補償器を設計した。 3.以上の制御系設計の枠組みに対して,モータ側と負荷側のセンサの組合せによる,セミクローズド制御系(モータ側センサのみ使用)とフ ルクローズド制御系(モータおよび負荷側センサを両方使用)の特性比較を,周波数領域(追従性,安定性,外乱抑圧性,ロバスト性)および 時間領域(整定性,制振性)の各指標に着目して行い,センサ構成による特徴の明確化およびフルフィードバック制御の有効性をそれぞれ提示した 。 4.さらに,フルフィードバックを前提とした負荷側状態量を含めたインピーダンス制御を構築し,所望のバックドライバビリティを実現し,ロボット衝突時の衝撃力緩和の基礎検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の2020年度研究計画・方法に従って,2019年度の継続研究として,負荷軸角度センサによるフルフィードバック2自由度位置決め制御系の設計と実験検証に関して,Lagrange方程式 ベースの物理モデルに基づく精密モデリングおよびそのパラメータ同定,周波数特性に関する制御仕様を満足する2自由度制御系のフィードバックおよびフィード フォワード補償器設計,バックドライバビリティに着目したインピーダンス制御系設計,のそれぞれを実施し,供試ロボット装置による実機検証も併せて提案手法の有効性を示すことができた。その2年間の成果は,以下のように纏められる。 1)セミクローズド制御系とフルクローズド制御系の特性比較を,周波数領域ならびに時間領域の各指標に着目し,安定性,外乱抑圧性,ロバスト性と,追従性,制定性,制振性の性能改善の具体的なアプローチを提示した。 2)フルクローズド制御を前提とした負荷側状態量を含めたインピーダンス制御の導入により,所望のバックドライバビリティを実現した。 これら一連の設計論と実験検証に対して,以降に示す学術論文や学会口頭発表により,その成果を公表できた。さらに,2021年度の研究計画に挙げている,トルクセンサフィードバックの併用によるロボット衝撃力の事前解析・評価および衝撃力緩和制御への展開に関しても,制御系CADベースの数値シミュレーションによって,設計論の基礎検討を年度前倒しで実施している。
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今後の研究の推進方策 |
〔負荷軸角度・トルクセンサの新規開発による制御性能の向上〕 申請者らが開発した負荷軸角度センサ(減速機出力にエンコーダスケールを設置)に対して,レゾルバの角度検出原理と磁歪効果を応用した角度とトルクを同時検出するセンサの新規開発・試作を予定しており,そのセンサを適用した状態量のフルフィードバック制御を適用することで,負荷トルクの直接フィードバックによる高感度化と,高速高精度性および制振性のさらなる向上を目指す。 ロボット制御系設計においては,安全性と拘束高精度を両立する運動制御として,「ロボットと人との衝突に対する,衝撃力モデル作成と緩和制御系の検証」を目指す予定である。具体的には,ロボットと環境との接触および衝突に対する「安全性」を,ロボットアーム側からみたバックドライバビリティ性能の向上と関連付け,上記トルクセンサフィードバックと併せて外乱の推定と補償,さらにロボットアーム側のインピーダンス制御による衝撃力の緩和へ展開する。衝撃力の事前解析および評価に際しては,ヘルツの接触応力式に基づき,人のインピーダンスモデルを用いた衝撃力の定式化を扱う予定である。そして,衝撃力の緩和制御により,センサおよび推定器による衝突時点の検出,衝突後のインピーダンス制御への切り替えとアーム食い込み動作の回避,安全な距離へのアーム離脱を,それぞれ実現すべく,制御系設計を予定する。 以上の制御アルゴリズム開発,数値シミュレーションによる特性解析,実機検証を,本補助金によって購入予定の計測器とそれぞれ有機的に組み合わせ,研究を推進していく。
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