研究課題/領域番号 |
19H02166
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
奥村 宏典 筑波大学, 数理物質系, 助教 (80756750)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱酸化 / イオン注入 / 窒化物半導体 / トランジスタ / MOS構造 / 高温熱処理 |
研究実績の概要 |
本研究では、超低損失かつ高耐圧素子の実現に向けて、窒化アルミニウム(AlN)素子作製の技術基盤を構築する研究を行った。以下に本年度に得られた成果をまとめる。 (1)AlN層の熱酸化:n型AlN層上酸化膜の作製と酸化膜/AlN界面の物性評価を行った。酸素雰囲気下1050度以下の熱処理ではAlN層表面に酸化膜が形成されなかった。しかし、酸素と窒素混合ガス中において1400度で熱処理を行ったところ、XRR測定においてAlN層表面に変質層が確認された。酸化膜が形成されたと考えられる。酸化膜厚は酸化時間共に増大した。熱酸化膜/AlN界面を調べるため、MOSキャパシタを作製したが、漏れ電流が大きく容量変化が見られなかった。TEOSを用いたPECVDやスパッタリングにより、AlN層上にSiO2膜を形成して、同様にMOSキャパシタを形成したが、熱酸化膜同様漏れ電流が大きかった。これらの大きな漏れ電流は、おそらくAlNと酸化膜のconduction band差が小さいためと考えられる。 (2)AlN層におけるイオン注入:サファイヤ基板上の厚膜AlN層にSiイオン注入を行うことで、1600度の高い熱処理においても、再現性良く電気伝導性を持つn型AlN層を得ることに成功した。MESFETを作製したところ、on/off比の大幅な増大を実現した。 (3)これまでの経験を活かして、AlNチャネルMESFETおよびSBDを用いて、高温での電気的特性評価を行った。MESFETとSBDともに、700度以上の高温動作を実現した。これは世界トップレベルの高温耐性デバイスである。今後は、高温耐性デバイスの特性向上を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、AlNの熱酸化膜の形成とSiO2堆積を用いて、AlNのMOS構造の作製と評価を行う予定であった。 本年度は、酸素雰囲気での熱酸化膜を試みたが、酸素雰囲気では装置の部品が高温で破損することから1200度以上まで上げられなかった。窒素ガスを混合することで1400度まで加熱でき、酸化膜の形成を実現した。しかし、良好な酸化膜/AlN構造は得られなかった。PECVDおよびスパッタリングを用いたSiO2でも同様に、良好な酸化膜/AlN構造が得られなかった。今後、ALDを用いて良好な酸化膜を形成し、MOS構造に再度挑戦する。また、AlNチャネルSBDおよびMESFETにおいて、700度以上でのデバイス動作に成功した。当初の研究計画と方向に基づき、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
既に当初予定の優れた高耐圧特性が得られており、イオン注入及び電極作製技術をもって、AlN素子作製の基盤技術が構築されつつある。また、想定外の結果として、高温特性でも良好な結果が得られつつある。一方で、当初の研究計画にあったTMBSの作製は、良好な酸化膜/AlN界面が得られ難いことから、非常に困難であると考える。これらの結果を踏まえて、縦型AlN PNダイオードにより超高耐圧素子実現を目指す。
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