研究課題/領域番号 |
19H02169
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大田 晃生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10553620)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゲルマニウム / 二次元結晶 / 電子物性 |
研究実績の概要 |
初年度は、単結晶絶縁性基板であるサファイア(0001)ウェハ上に極薄のゲルマニウム結晶層の成長に関する知見を深めることに注力して、研究を推進した。 まず、サファイア基板をアセトン溶液を用いた超音波洗浄を行った後、窒素雰囲気中1050度の熱処理を行うことで、原子レベルで平坦な表面を形成できることを確認した。次に、アルゴンガスを用いたRFマグネトロンスパッタリング法によりゲルマニウムをわずかに固溶したシリコン層を成長し、酸素雰囲気中熱処理によるシリコンの酸化とそれに伴うゲルマニウムの濃縮・析出をも試みた。しかしながら、初期のシリコンゲルマニウム層の結晶状態に影響して、島状にゲルマニウム結晶が析出する傾向が認められた。 そこで、表面清浄化したサファイア上にゲルマニウム薄膜を堆積し、一部の試料は保護膜としてBEDASガスと酸素プラズマを用いた原子層制御化学気相堆積(ALD)によりシリコン酸化膜を形成した。試料作成の各段階で測定した原子間力顕微鏡(AFM)像より、ゲルマニウム薄膜およびシリコン酸化膜堆積後の試料表面の平坦性を維持し、均一な膜形成を確認している。シリコン酸化膜を形成しない場合では、窒素雰囲気中熱処理後に表面荒れが生じるのに対して、シリコン酸化膜を堆積することでその抑制ができ、AFM像では表面近傍の結晶状態を反映する規則的なラインが認められた。これは、熱処理時のゲルマニウム(もしくはゲルマニウム酸化物)脱離やマイグレーションが抑えられたことに起因する。さらに、ゲルマニウム薄膜の結晶性をラマン散乱分析より評価したところ、熱処理前では、非晶質相に特有のブロードなTOフォノン信号が支配的であるのに対して、熱処理を行うことで、結晶相のシャープな信号が顕著となることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた数at.%のゲルマニウムを添加したシリコン層の酸素雰囲気中熱処理によるシリコンの酸化とそれに伴うゲルマニウムの濃縮・析出による極薄のゲルマニウム結晶の成長を試みたが、初期のシリコンゲルマニウム層の結晶状態に影響して、シリコン酸化膜とサファイア基板の界面の島状にゲルマニウム結晶が析出する傾向が認められた。そこで、極薄ゲルマニウムの形成とその結晶化に切り替えて研究を推進し、保護膜としてシリコン酸化膜を形成することで、高温の窒素雰囲気中で熱処理においても表面の平坦性を維持してゲルマニウム薄膜の結晶化ができることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、サファイア(0001)面上で高品質・高結晶性のゲルマニウム薄膜を形成する方法を探究する。特に、ゲルマニウム薄膜の単結晶化と薄層化を探求する。試料作成の各段階において、X線光電子分光法やラマン散乱分光法により化学構造を調べ、結晶化や成長メカニズムを調べると共に、熱安定性や下地基板との化学反応等を調べる。また、X線回折法や、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡などを用いて結晶構造や平坦性を評価することで、極薄結晶層および二次元結晶成長に向けた指針を構築することを目指す。
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