最終年度は、極薄Ge膜の単結晶化とその薄膜化に注力して研究を推進した。試料作製は、化学溶液洗浄と熱処理により表面清浄化したサファイア(0001)上に、RFマグネトロンスパッタによりGe薄膜を堆積し、保護膜としてBEDASガスと酸素プラズマを用いたALDにより厚さ15nmのSiO2を形成した。その後、一部の試料は、PECVDにより厚さ200nmのSiO2を堆積した。結晶化のため赤外線ランプ炉により窒素雰囲気中で熱処理を行った。 前年度までに、核発生と結晶成長を制御した二段階の熱処理により、Ge薄膜表面の平坦性を維持し、固相結晶化できることを明らかにしている。この方法で結晶化した厚さ6nmのGe薄膜に対して、厚さ15nmのSiO2保護膜越しに500度の熱酸化を行い、Ge膜を薄膜化した。その結果、酸化時間に対してほぼ線形にGe膜厚が減少することから、酸素原子の拡散よりも酸化反応に律速されていると考えられる。840分の熱酸化でGe膜を厚さ~1nmにでき、膜厚制御が可能であることが分かった。しかし、結晶粒界など面内で不均一な酸化が示唆されることから、極薄膜形成には結晶性の向上が必要と考えられた。そこで、940度の熱処理による溶融結晶化を行った。保護膜であるSiO2の厚さが15nmでは、熱処理に伴うGeの消失が認められ、200nmの場合では、き裂が生じた。厚い保護膜では、熱膨張係数差により応力が生じたと考えられる。熱処理時の昇温・降温レートを調整することでき裂の形成を抑制でき、Ge薄膜の厚さ~18nmでは200度/分以下、6nmでは500度/分にすることが良いことが分かった。溶融結晶化した厚さ6nmのGe薄膜において、試料表面の二乗平均粗さはおよそ0.3nmと熱処理による表面荒れは小さく、ラマン散乱分光分析ではGeウェハと同等の結晶Geピークを観測できた。
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