研究課題/領域番号 |
19H02179
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
永崎 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 首席研究員 (20242018)
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研究分担者 |
伊豫 彰 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (50356523)
荻野 拓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (70359545)
石田 茂之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (90738064)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高温超伝導体 / 鉄系超伝導体 / バルク / 臨界電流密度 |
研究実績の概要 |
2019年度は、申請者がこれまで培ってきた多結晶試料合成技術を活用・発展させることにより、良好な超伝導特性と機械的特性を有するCaKFe2As2多結晶バルク試料の合成プロセスを確立した。具体的には、前駆体(CaAs, Ca3As, KAs, Fe2As, FeAs等)の組み合わせと合成温度の最適化を行うことで良質の粉末試料を合成し、さらに、粉末試料のバルク体焼結加工に当たっては、高密度化に有効であると考えられる放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering, SPS)法によってバルク焼結体を作製した。同手法で得られたバルク試料(SPSバルク)の密度は5.02g/cm3と高く、CaKFe4As4の理論密度の96.2%に相当する。SPSバルクの超伝導転移温度(Tc)は35.6Kであり、通常得られる多結晶試料のTc(34.3K)よりも高いことが確認された。SPSバルクの電気抵抗率は通常のバルク試料と比較して約1桁小さく、結晶粒の接続性が向上していることが示された。磁化ヒステリシスループから計算したSPSバルクの臨界電流密度(Jc)は、4.2K、5Tで1.8×104A/cm2に達し、これまでに報告された鉄系超伝導バルクの磁気的Jcの中で最も高い値であった。また、出発原料にスズ(Sn)を添加することで、多結晶試料の合成温度を通常よりも100℃近く下げられることも見出した。また、現有の超伝導マグネットと無冷媒クライオスタット、三次元磁場分布測定装置を組み合わせて、5Tまでの静磁場で磁束を印加した後に20Kにおいて捕捉磁場の空間分布が測定可能な走査型ホール素子顕微鏡システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SPS法を用いて高Tcかつ高密度なCaKFe4As4バルク試料の作製に成功を収めた。同試料のJcはこれまでに鉄系高温超伝導体で報告されている最高値を示しており、同試料を用いた無冷媒バルク磁石開発における大きなマイルストーンと考えられる。また、測定面においては、走査型ホール顕微鏡測定システムの構築が行われ、今後の試料特性評価が効率よく行われると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
バルク試料の大型化、および、Sn添加による合成温度のさらなる最適化を進める。並行して、走査型ホール顕微鏡を用いて、これまでに作成された試料のJcの空間分布を評価し、Jc向上への指針を得るとともに、プロトタイプ磁石の作製とその評価を開始する。
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