研究課題/領域番号 |
19H02187
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石鍋 隆宏 東北大学, 工学研究科, 准教授 (30361132)
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研究分担者 |
黒田 理人 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40581294)
柴田 陽生 東北大学, 工学研究科, 助教 (70771880)
若生 一広 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (90500893)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分光イメージング / 液晶バンドパスフィルタ / 高感度CMOSイメージセンサ |
研究実績の概要 |
本研究は、ナノサイズの高分子ネットワークの構造制御による液晶応答の高速化手法を確立し、高い透過率を有する高速波長可変分光フィルターを実現すると共に、高感度・広ダイナミックレンジ・広光波長帯域を有するグローバルシャッタCMOSイメージングセンサ技術を確立し、これらの技術を組み合わせ高速に高精細分光画像が取得可能な、超小型・リアルタイム分光イメージングシステムを構築することを目的とし、以下の項目について検討を行った。 1. サブミリ秒の応答性を有する高速分光素子の作製 液晶ファブリ・ペローエタロンを用いた高速波長可変分光フィルターの実現に向けて、反射電極層の設計・試作を行った。ピーク透過率を向上させるため吸収が少ない誘電体薄膜をガラス基板上に成膜し、その後、ITO透明電極を積層することにより、ピーク透過率80%を有する分光フィルターを実現することに成功した。更に、シール剤の塗布パターンの最適化により、フィルター内におけるピーク波長のずれを2nm以下に抑え、高い均一性を実現した。応答時間は1ミリ秒以下であることを確認し、電圧印加による高速波長可変分光を達成した。 2. 高感度CMOSイメージセンサの試作と高速撮像性能の評価 令和元年度に明らかにした画素構成を有する、画素サイズ22.4ミクロン角、画素数 140×140のCMOSイメージセンサのプロトタイプを設計・試作してその特性を計測 した。高容量密度シリコントレンチ型キャパシタを用いた画素内信号保持容量を適用することで、全画素同時露光動作を行うグローバルシャッタモードにて1000 コマ/秒の撮像性能を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和2年度は、高速に高精細分光画像が取得可能な、超小型・リアルタイム分光イメージングシステムの実現に向けて、(1) サブミリ秒の応答性を有する高速分光素子の作製、(2) 高感度CMOSイメージセンサの試作と高速撮像性能の評価について検討を行い、この結果、反射電極としてガラス基板上に誘電体薄膜層およびITO透明電極層を設けることでピーク透過率80%、応答時間1ミリ秒以下を有する高速分光素子を実現した。更に電圧印加による透過波長制御が可能であることも実証した。また、CMOSイメージセンサのプロトタイプを設計・試作し、高容量密度シリコントレンチ型キャパシタを用いた画素内信号保持容量を適用することで、全画素同時露光動作を行うグローバルシャッタモードにて1000 コマ/秒の撮像性能を達成した。これらの成果は、次年度に検討を予定していた項目の一部であり、以上のことから、本研究は計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、前年度までに得られた設計条件に基づき、高分子配向安定化ブルー層液晶を用いた液晶エタロンを作製し、高い透過率を有する高速波長可変分光フィルターを実現する。グルコースの濃度評価に必要な960nm、および1050nmの波長の光を透過させる干渉フィルターを設計・試作し、高感度CMOSセンサーと組み合わせると共に、光が素子に垂直に入射するための平行レンズ光学系を作製し、高感度・高速分光イメージングシステムを試作する。液晶分光素子の駆動においては、透過波長の切り替え時に短時間の高電圧を印加するオーバードライブ駆動回路を設計し、オーバードライブ電圧および時間の最適化により、素子の高速化を実現する。生理食塩水内に分散させたグルコース濃度のリアルタイム計測を実施し、測定精度の評価を通じて本システムの有効性を実証する。
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