研究課題/領域番号 |
19H02189
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高木 康博 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50236189)
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研究分担者 |
長浜 佑樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60833598)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホログラフィー / MEMS / 空間光変調器 / 立体表示 / 光走査 |
研究実績の概要 |
(1) MEMS空間光変調器のモジュール化 MEMS空間光変調器は半導体プロセスで作られるため、半導体ウェハーより大きな画面サイズは実現できない。そこで、複数のMEMS空間光変調器を組み合わせてさらなる大画面化を可能にするため、枠なし表示モジュールの開発を行った。 当初の計画では、レンズやハーフミラーなどのディスクリートな光学部品を組み合わせて枠なし表示モジュールを実現することを予定していた。しかし、この実現方法では表示モジュールが大型化する。そのため、本研究では、ホログラム光学素子(HOE)を用いて表示モジュールを実現することにした。HOEは、ホログラム技術で薄いホログラムフィルムで光学素子の機能を実現できる。厚さ15 mmのアクリルの導光板に2枚のHOEを組み合わせることで、表示モジュールの光学系を実現した。HOEの作製にはフォトポリマーを用いた。また、HOEの設計を最適化することで、光の利用効率を35%に向上させることに成功した。さらに、MEMS空間光変調器を照明方法としてダブルパルス法を開発して、ホログラムの再生像の光強度を約2倍に向上させた。 (2) モジュールアレイによる画面サイズ拡大 上記のホログラム表示モジュールを2台用いて画面サイズの拡大を実現した。その際、タイリングした枠なし表示面全体に共通なスクリーンレンズを取り付けることで、2台のホログラム表示モジュールの視域を一致させた。また、タイリングに対応したホログラム計算法を開発した。同時に、時分割法によりスペックルによる画質劣化を解決する方法についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、MEMS空間光変調器のモジュール化とモジュールアレイによる画面サイズ拡大を行った。さらに、表示モジュールの実現にHOEを用いて、モジュールの小型化と光効率の向上が実現できた点では予定していたよりも優れた研究成果が得られていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1) カラー化の実現:1台のMEMS空間光変調器に対して、RGBの3色の半導体レーザでパルス光を順次照射することで、時分割法でカラー表示を実現する。視域の幅は波長に依存するので、RGB各色で、パルス光の照射タイミングを変えて縮小された視域が連続するようにする。RGBレーザーの波長を635 nm, 532 nm, 440 nmとすると、視域角はそれぞれ2.4°、2.0°、 1.7°となる。DMDの走査角48°を隙間なく視域で並べるためには、走査点数をそれぞれ20, 24, 29以上とする必要があり、全体の走査点数は73以上が必要である。 (2) ホログラム専用MEMS空間光変調器の検討:プロジェクタ用に設計されたDMDは、MEMSミラーのサイズを小さくし、回転時間が短くなるように設計されている。提案法では、逆に、画面サイズ拡大のためにはMEMSミラーは大きく、走査点数を増やすために回転時間は長い方が適している。これまでの研究成果をもとに、ホログラム表示に適したMEMS空間光変調器に必要な性能を明らかにする。 (3) まとめ:以上の研究成果を取りまとめて、ホログラム専用のMEMS空間光変調器の実現とそれを用いたホログラフィックディスプレイの実現に向けた研究予算の申請の準備を行う。
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