本研究課題では①低損失な導波路型光アイソレータと②超低消費電力駆動が可能な自己保持型光スイッチの開発を目的としている。本年度、それぞれの課題について以下の検討を実施した。 まず①では、表面活性化接合装置のプラズマ照射をN2プラズマからO2プラズマに変更することで、磁気光学ガーネット接合領域の伝搬損失を30dB/cmから15dB/cmに低減することに成功した。これは、1mm長ほどのデバイスにおいて1.5dBの損失低減に相当する。また、TE-TM半モード変換に基づく導波路型光アイソレータについて、TE0とTE1モードを等励振する多モード干渉部において入力導波路にテーパを設けることで不要なTE2モードの励振を抑制し過剰損失を1.0dBほど低減できることを計算により明らかにした。 次に②では、より産業化に適したデバイス構造として、Silicon-on-insulator(SOI)基板上での自己保持型光スイッチの形成を検討した。磁気光学ガーネットを表面活性化接合により上部クラッド層として貼り付ける手法を採用し、薄膜磁石と電極をSi導波路の横に配置する構成を考案し、それを実現する作製プロセスの条件だしを行った。薄膜磁石のO2プラズマ暴露に対する影響などを調査し、薄膜磁石のみを導波路横に配置した光スイッチの作製とその自己保持動作の実証に成功した。また、2021年度から検討を進めたコプレーナ線路を用いた光スイッチの高速応答の検討結果については、成果発表した国際会議OECC/PCS2022と応用物理学会学術講演会でBest Student Paper Awardと講演奨励賞を受賞する評価を得た。
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