研究課題/領域番号 |
19H02192
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
筒井 一生 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (60188589)
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研究分担者 |
清水 三聡 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, ラボ長 (10357212)
星井 拓也 東京工業大学, 工学院, 助教 (20611049)
角嶋 邦之 東京工業大学, 工学院, 准教授 (50401568)
山田 永 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (60644432)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 立体チャネル / FinFET / 窒化ガリウム / 選択成長 / GaN |
研究実績の概要 |
パワー半導体デバイス用として優れた特性が期待される窒化ガリウム(GaN)系半導体では、高電子移動度トランジスタ(HEMT)と呼ばれる平面形のトランジスタが実用段階にある。これに対し、本研究では、Fin形電界効果トランジスタ(FinFET)と呼ばれるチャネルを立体的に立てた形状のGaN系トランジスタを結晶の選択成長技術を用いて試作するとともに、デバイスシミュレーションを併用して、種々考えられる電流経路形態のデバイス特性の利害得失を比較議論し、HEMTの特性を凌駕するGaNによるFinFETの可能性を実証的に明らかにしてゆく。試作においては、Fin構造を従来行われて来たエッチング法ではなく、選択成長法を用いて高特性を目指すところに特徴がある。これにより、多様なデバイス形態に対応した結晶品質の高いGaN系Fin構造を実現してゆく。デバイスシミュレーションも組合せ、GaN系FinFETの可能性と方向性を示して行く。 令和3年度は、デバイス試作において、従来問題であった選択成長の窓形成プロセスでのエッチングダメージによるリーク電流抑制と選択成長GaNの品質劣化による相互コンダクタンス低下の抑制を両立できるエッチングプロセスの探索を進め、新たにC4F8系ガスによるエッチングが有望であることを明らかにした。また、異なるチャネル伝導形態をもつFinFETの特性上の利害特質の比較をシミュレーションで進めた。その結果、2次元電子ガス(2DEG)を用いないバルク伝導型では簡易な構造で耐圧を得やすいがオン抵抗の低減には限界があること、一方、Fin構造の側壁に2DEGチャネルを形成する側壁2DEG型では、オン抵抗を効果的に低減でき、ゲート端部に電界緩和構造を導入することで耐圧も確保できる結果、耐圧-オン抵抗のトレードオフ特性上で、従来の平面型HEMTを凌駕する可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FinFETの作製プロセス上の問題として、当初、選択成長の窓開けエッチングにSF6ガスによるエッチング(RIE)を用いると基板側GaNにダメージが入り大きなリーク電流が発生した。これに対し、前年度までにBCl3ガス系のRIEではリーク電流を大きく低減できるが、選択成長GaNの電気的特性が不良になる新たな問題が発生していた。これらの問題に対して、今年度に新たにC4F8系ガスのRIEでは、リーク電流の抑制と高品質の選択成長GaNを両立できることを見出し、かなり時間を要したがこの問題に対する一つの解決解に至った。しかし、FinFET作製の実施において、プロセス上の別のトラブルが発生し、デバイス特性でこれを実証するには至っておらず現時点で残された課題である。 FinFETの異なる伝導形態の特性上のポテンシャルをシミュレーションで比較する課題は、検討がかなり進んだ。3種類の伝導形態のうち、側壁2DEG型が将来的には従来型の平面HEMTを凌駕する特性を実現し得ることを定量的に示すことができた。こちらは今年度に順調に進められたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和4年度は、デバイス試作による研究の完成領域を目指す。試作はバルク伝導型に集中し、当初のコンセプトである選択成長法の有用性をデバイス特性で実証する。そのために、デバイス作製プロセス上の最適化が不完全な部分を再検討するととともに、既にシミュレーションで有効性が確認されているドレインドリフト領域の拡幅構造を取り入れたデバイスも試作する。 作製プロセスの最適化検討は、GaN選択成長初期の核形成状態に着目して成長窓形成エッチングの条件、エッチング後の基板表面処理、ゲート絶縁膜形成条件などを中心に行う。 また、選択成長法の優位性を示すため、従来のエッチング法との比較が必要である。それぞれのプロセスの充分な最適化は難しいが、両者の方法で作製したGaN Fin構造のプロセスに依存した抵抗率の変化を調べる方法でも、ダメージ形成の状況を比較できると考える。 最終的に、エッチング法との比較も含めて、選択成長法によるGaN FinFETの相互コンダクタンス、最大ドレイン電流、閾値制御性などのデバイス特性とそこから求められる移動度などの材料特性を明らかにし、この技術の可能性を示すことを目指す。
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