研究課題
令和2年度では、井桁構造を有するメタマテリアルフィルムを提案・作製することで、可視域において迷彩技術を構築することを目指した。一般的に、対象物を不可視化させる際には、その周囲の誘電率と透磁率の値を空間位置に対して極めて精細に制御することが要求される。ここで、メタマテリアルの構成要素となる金属構造体の寸法に対して誘電率や透磁率の値が大きく変化するようだと、精細な値の制御が困難となる。可視・赤外のような高周波帯で動作するメタマテリアル構造として、現在までに多分割スプリットリング共振器やフィッシュネット構造などが提案されているが、いずれも寸法が数ナノ変化しただけで透磁率が大きく変化するため、不可視化を実現する上で適当とはいえない。そこで、高周波において透磁率の値を精密に制御可能な井桁構造のメタマテリアルを提案した。構造は4本の金属細線を積層した井桁型構造となっており、構造の中央がリアクタンス(L)として、1層目と2層目の金属細線が重なっている箇所周辺がキャパシタンス(C)として機能する。本構造において、各層における金属細線の間隔を変化させると、LとCの値が互いに相反して変化する。これにより、メタマテリアルの共振周波数は金属細線の間隔に対して極めて小さい変化量を示すため、透磁率の値を精密に設計することが可能となった。設計に基づいて、電子ビーム描画装置の位置合わせ露光を用いて、実際に井桁構造のメタマテリアルを内包するメタマテリアルフィルムを作製し、顕微紫外可視赤外分光を用いることでフィルムの特性を評価した。
2: おおむね順調に進展している
本年度では、高周波において透磁率を精密にコントロールできる井桁構造のメタマテリアルの提案および理論解析を行い、それらを有機薄膜フィルム内に内包することで、フィルム特性の評価を行った。提案したメタマテリアルでは、対象周波数を410THz(赤色領域)に設定した場合、透磁率を0から0.5まで変化させるために、寸法として約40nmの変化幅が許容されており、可視域での光学迷彩を実現するために十分な性能を満たしている。最終年度において、本フィルムを用いた可視域でのクローキングを実現する予定であり、研究自体はおおむね順調に進展しているといえる。
前述の井桁型メタマテリアルフィルムを用いて不可視化を実現する。具体的には、あらかじめフィルム内に特定の誘電率と透磁率分布をもつように井桁型メタマテリアルを内包させておき、それを対象物に巻きつける。可視域(~410THz)において直径50μmの円柱形状の対象物を不可視化するための、フィルム内の透磁率分布を計算した後、この透磁率分布を実現するために、あらかじめフィルム内に内包すべき井桁構造のメタマテリアルの寸法を決定する。上記のもとづいて実際にデバイスを作製し、顕微紫外可視イメージングによって不可視化の実証を行う予定である。
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