研究課題/領域番号 |
19H02195
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
元廣 友美 名古屋大学, 未来社会創造機構, 客員教授 (20394421)
|
研究分担者 |
盧 柱亨 関東学院大学, 総合研究推進機構, 教授 (50313474)
佐々木 実 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70282100)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 超電導コイル / 電力貯蔵 / シリコンウェハ / トレンチ / MOD法 / 銅酸化物高温超電導薄膜 / シリコン微細加工プロセス / 銅めっき |
研究実績の概要 |
Si基板上に微細加工した平面螺旋状トレンチ内に埋め込み成膜した超電導薄膜コイルの蓄電応用を目指し、NbNスパッタ膜で埋め込み超電導平面螺旋コイルを実現した技術を基に、YBCO膜で高性能化を目指す。このため、Si基板上にバッファ層(YSZ膜、CeO2膜)、薄いYBCO下地膜をスパッタ成膜した後、MOD法でYBCO膜を成膜し、Tc=45.5Kの超電導薄膜を得ていた。R1年度は、まずこれを改善し、Tc=90KのYBCO膜実現を目指した。種々の実験条件を試したが、往時のスパッタ装置の基板温度670℃の再現ができなかったため、補助ランプヒータを更新・再設計、発注し3月までに納入された。この間、真空計と制御系が故障し、修理を行った。一方、過去にバッファ層を成膜したSi基板を用い、MOD-YBCO膜のディップコート、所定酸素濃度での熱処理ができるプロセスを再構築して、極低温抵抗-温度特性測定が2月までに一通り実施できるようになった。この間、並行して、より具体的な蓄電容量予測計算を行い、12月に京都で行われた国際会議ISS2019で発表、合わせて論文のIOP Conf. Series: Journal of Physics: Conf. Seriesへの掲載が決定した。なお、同学会での京大・土井(俊哉)教授との新たな交流で、豊田工大で用意した平面螺旋トレンチSi基板に土井研のMgB2膜を成膜、関東学院大に送り化学機械研磨を実施してMgB2平面螺旋コイルを試作した。R2年度、性能を評価する。豊田工大では市販超電導リボンを加工して超電導コイルを作る方法も検討し、前段階として銅箔を加工してコイルを作る技術を確立した。関東学院大学では、YBCO膜を腐食しない中性(pH6~pH8)のめっき液を創出し、後工程CMPの加工偏差低減のため、めっき被膜厚さのばらつき抑制5μm以下に目途をつけた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
6月に研究設備を学内新実験室への移設し、立ち上げを行った。これに際し、電源、給排水、集中ガス配管、排気設備等ユーティリティの整備に予想外の時間を要し、更に運搬と経年劣化によると思われる装置故障への対処でも時間がかかり、試料の作成ができず、関東学院大の後工程ならびに豊田工大へのfeedback、平面螺旋トレンチ設計改良が予定通り進まなかった。また、3月はCOVID-19対策で実験を停止した。
|
今後の研究の推進方策 |
再設計・強化した基板加熱ヒータを用い、バッファ層、YBCO下地膜のスパッタ条件の再確立、MOD-YBCO膜の作成条件を再確立し、安定的にSi基板上にTc=90KのYBCO膜が実現できるようにする。さらに、平面螺旋溝を形成した4インチSiウェハ全体にMOD成膜が行えるディップコートあるいは、スピンコート条件を確立し、あらたに真空装置内に4インチウェハを800℃まで均熱熱処理できる基板ヒータを導入して、均一な膜質のYBCO膜を成膜し、引き続くCuおよびめっき化学機械研磨により超電導平面螺旋コイルの実現を目指す。関東学院大学でも独自に非配向のMOD-YBCO膜をSiウェハ上に成膜する技術を確立し、YBCOを化学的に腐食しないCuめっき方法を確立する。豊田工大では、平面螺旋コイル2枚を超電導接続するウェハ接合技術のための要素技術確立を目指す。
|