研究課題/領域番号 |
19H02199
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒木 徹平 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (10749518)
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研究分担者 |
和泉 慎太郎 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (60621646)
河野 行雄 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (90334250)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フレキシブルエレクトロニクス |
研究実績の概要 |
2020年度では、ストレッチャブル配線と多チャネル光センサを用いた塗布型センサシートを構築し、年度目標であったイメージングシステムの確立に至った。塗布型センサシートは、室温において低ノイズ・高感度であるため、金属性物体のイメージング、温度計測、分子の計測・流れの可視化等を実現した。すなわち、本研究課題である「ストレッチャブル光センサ素子の塗布形成とイメージングシステムへの応用」を達成した。 カーボンナノチューブを用いた光センサをストレッチャブル配線に接続することで、数~10ch程度の塗布型センサシートが構築されている。光応答による出力は、2倍程度伸長させても変化ない。これにより、曲面を有する対象物や、外力により変形する対象物(生体など)に対してイメージングが継続できる。現在、これらの成果をまとめ終え、英文査読付学術誌へ投稿中である。 また、ストレッチャブル配線に利用可能な金属ナノワイヤを用いて、配線・トランジスタの開発を行った。今回、ナノネットワーク制御を行って配線の高特性化(微細化と導電性向上)に成功した。高特性な金属ナノワイヤ配線を用いて有機トランジスタを作製すると、トランジスタ特性の性能も向上した。伝送長法によりナノワイヤと有機半導体におけるナノ界面の評価を行った。その結果、効率的なナノネットワークを有する場合、金属ナノワイヤ配線と有機半導体の界面接触抵抗が低下するという知見を得た。これらの配線・トランジスタの開発および電荷輸送の理解に関する成果は、英文査読付学術誌により採択済みである。 さらに、あらゆる分子・イオンへ着目可能な多角的評価の実現を目指して、10ch以上の光センサ素子アレイの構築に着手した。今後、スイッチ素子等のトランジスタ回路を内臓するアクティブ駆動型センサシートを構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画を着実かつ円滑に遂行した結果、前倒して実施可能な項目が増えたため、当初の計画以上に進展した。結果的に、本研究の課題である「ストレッチャブル光センサ素子の塗布形成とイメージングシステムへの応用」をパッシブ駆動の塗布型センサシートにより達成した。それにとどまらず、有機トランジスタ回路・アレイの試作・検証を行うなど、課題だし迄行えており2021年度の研究遂行を前倒しで行った。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、イメージングシステムの確立にむけて、ストレッチャブル配線と多チャネル光センサを用いた塗布型センサシートを構築した。しかし、塗布型センサシートは現状パッシブ駆動であり、アレイ化を行う際には配線爆発が生じて不利となる。そこで、本年度の目標は、スイッチ素子等のトランジスタ回路を内臓するアクティブ駆動型センサシートを構築し、素子特性の向上、システム実証・検証を行う。研究目的に記載した「光センサ素子のアレイ化および最適な回路設計を組み合わしたイメージングシステムを構築し、あらゆる分子・イオンへ着目可能な多角的評価の実現を目指す」ことに相当する。 まず、2020年度まで開発していた有機トランジスタ回路と光センサの結合を行う。その際、小型・薄膜な遮蔽構造や光学フィルタ、発光素子等の実装を検討して、イメージングシステムの構築に向けた研究開発を行う。その後、アレイ化に着手し、これまでに開発したトランジスタ回路の設計変更も検討しながら、低ノイズ・高感度化を限界まで突き詰める。 また、これまで有機トランジスタにおけるナノ材料界面の電気伝導特性を理解するための研究を行ってきた。本年度、有機トランジスタと光センサを結合する際においても、電荷輸送の理解を進めて、素子特性を向上させるための方策を検討する。素子評価項目として、ノイズや感度、RC時定数、応答速度、リーク電流なども設定予定である。得られた方策を具体的な技術に落とし込み、アクティブ駆動型センサシートへ実装可能かを検討・調査する。 並行して、得られた結果の評価・解析を進め、学会や学術論文など成果報告の実施・準備を進める。
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