研究課題/領域番号 |
19H02203
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 健伸 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60367828)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アンダーソン局在 / 赤外イメージ伝送 / 光ファイバ |
研究実績の概要 |
本研究では,断面方向にランダムな屈折率分布を持つ光ファイバを用いることで,高い解像度で赤外イメージ伝送を実現することを目的としている.本年度は,赤外透過率の高い材料としてテルライトガラスおよびカルコゲナイドガラスを用いて,導波モードの空間分布を均一化するため異種ガラスを複合化したガラスロッドをランダムに配置したファイバの作製方法の開発した. 導波モードの分布の粗密の発生を回避するため,2種類のガラスロッドを2本づつの計4本のガラスロッドを束ねた複合ロッドを作製することを試みた.この方法では,ファイバ線引き時に異種のガラスが分離してしまい,ファイバの作製ができなかった. 次に,異種材同士の接触面積を増やすため,直径約200マイクロメートルの細径のロッド450本を1組とし,2種類の異なるガラスロッドの2組づつ計4組を束ねて線引きすることを試みた.この方法を用いることで目的とする直径約100マイクロメートルの複合ロッドを作製することに成功した.1000本の複合ロッドを束ねて,テルライトガラスチューブに挿入して線引きすることでテルライトガラスランダム断面構造ファイバの作製に成功した.このファイバは同種のガラスが接しないガラスロッドをランダムに並べて作製したため,粗密のない断面構造が実現した. 作製に成功したテルライトランダム断面構造ファイバにたいして,波長1.55マイクロメートルの赤外光をシングルモードファイバから入射した.出射光はランダム断面構造によって十分閉じ込められることが確認でき,入射位置に対応した位置に出射されることから,導波モードの空間分布の偏りも少ないことが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
導波モードの空間分布を均一化したアンダーソン局在ファイバの作製に成功し,光伝送の実験を行った結果,光閉じ込めが可能であること導波モードの分布の偏りが少ないことを確認することができた.当初の計画した手法がうまく機能しており,ほぼ期待した結果が出ていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,有限要素法を用いた数値シミュレーションの結果,高屈折率ガラスロッドの径に不均一性を与えることで,隣接する高屈折率ガラスに広がることが抑制されることを定量的に明らかにした.高屈折率ガラスロッドに局在化するモードを考えたとき,隣接するモード間の伝搬定数に差が大きいほど,また,隣接モードの電場分布の重なりが小さいほど,伝搬光のひろがりを抑制することができる.本年度は,上記の結果に基づいて,高屈折率ガラスロッドの径の不均一性に由来する伝搬定数が異なるガラスロッド同士が隣接し,なおかつ高屈折率ガラスロッド同士は最密充填となるような構造で,伝搬光のひろがりを押さえつつ,モードの横方向の実空間での数密度を高めるような構造のイメージ伝送ファイバをテルライトガラスおよびカルコトゲナイドガラスで作製する.径が不均一な高屈折率ガラスロッドからなるファイバ素線を作製する. 手法としては,内径の異なる複数の低屈折率ガラスチューブを用いる方法と内径にテーパーをつけた低屈折率ガラスチューブを作製する方法を試みる.また,昨年度は複数のガラスをモールドに詰めて,同時に押出すことで複合ガラス材料からなるガラスロッドを作製することを試みた.モールドの形状および押し出し条件が明らかになってきたので,本年度は引き続き押し出し法による複合ガラスロッドを用いたランダム断面構造ファイバを作製する. 最終的に上記の方法で作製したランダム断面構造ファイバを用いて,赤外波長域での高解像度イメージ伝送が可能であることを実験的に確認 する.
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