研究課題
裏面照射型マルチ電荷収集ゲート構造(BSI-MCG)に基づいた超高速撮像素子について,シリコンフォトダイオード(Si PD)を用いた場合の理論的な時間分解能の限界は11.1psであることをこれまでに示した.時間分解能を低下させる要因のひとつは,電荷収集ゲートへの不要な信号電荷の混入を防ぐp-well上での信号電荷の水平方向運動による混合であるため,これを可能な限り抑制することを目的として,電荷収集ピラミッド構造を提案した.さらに,このピラミッド構造の傾斜面に適度なボロンドーピングをすると,垂直電界の80%程度の壁面方向電界により信号電荷をスムーズに表面側に導くことができることを示した.この構造は,集光が難しいX線領域での超高速撮影に最適であるため,CERNとの共同研究を行い,成果を発表した.また,Si PDの理論的な時間分解能の限界11.1psよりも短い時間分解能をもつ撮像素子を,“スーパー時間分解イメージセンサ”と呼ぶことにし,これを実現するための方法として,Siよりも吸収係数が大きい光電変換材料であるゲルマニウム(Ge)を用いたフォトダイオードを用いることを提案した.可視光の波長帯域におけるGeの吸収係数はSiの数十倍であるため,非常に薄いPDを可能にする.また,Geの電子の飽和ドリフト速度はSiのおよそ2/3であり,Ge PDにおいては電子の伝播時間が非常に短かくなることを示唆する一方,Geの電子の拡散係数はSiの4倍である.このような条件で,GePDを用いた場合の時間分解能について,モンテカルロ法を用いたシミュレーションを行った.その結果,1.41psの時間分解能に到達するとの見積もりを得た.
3: やや遅れている
撮像高速化のためのアーキテクチャや画素構造の検討は順調に進んでいる一方,電荷収集ピラミッド構造開発に関わるデバイス評価や,先端計測技術への応用開拓など,研究協力者と連携して進める部分については,新型コロナウイルス感染症の影響により,実験や海外渡航を延期したことなどから,一部計画通りに進められなかった.
(1) ゲルマニウムフォトダイオード(Ge PD)を用いたスーパー時間分解イメージセンサについて,駆動読み出し回路も含めた画素構造を設計する.また,ドライバの基本設計を行う.(2) 画素内カスケードパイプライン記録構造を用いた画素回路およびイメージセンサの構造について高速化の観点からさらに検討を進める.(3) 電荷収集ピラミッド構造の評価結果に基づいて,他研究機関とも協力しながらさらに検討を進める.(4) 先端計測技術への応用開拓について,研究協力者と連携しながら,実験計画を進める.
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 979 ページ: 164461
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Sensors
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