研究課題/領域番号 |
19H02205
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
小嶋 崇文 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (00617417)
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研究分担者 |
鵜澤 佳徳 国立天文台, 先端技術センター, 教授 (00359093)
木内 等 国立天文台, アルマプロジェクト, 特任教授 (90358911)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SISミキサ / 超伝導 / 低雑音増幅器 / マイクロ波 |
研究実績の概要 |
本年度は増幅器の評価を進めるとともに、SISミキサの再設計を進めた。 昨年度までにプローブステーションおよびベクトルネットワークアナライザを用いたアップコンバータ・ダウンコンバータのオンウエハ測定系、また、SISミキサモジュールを用いたコンバータ利得・雑音温度の測定系構築を進めてきた。当該年度は、100 GHz帯SISミキサを2つ用いて増幅器を構成し、利得及び雑音温度の評価を実施した。両SISミキサ間には100 GHz帯の冷却型低損失アイソレータを挿入し、2つのSISミキサがインピーダンス的に互いに独立して動作するようにした。また、局部発信機(LO)系由来の振幅雑音を低減するために、Gunn発信機を用い、単一のLO信号源で2つのSISミキサを駆動する系を構成した。その結果、5 GHz以下の増幅器動作周波数帯において、典型的に6dBの利得、15 K以下の雑音温度で動作することを確認した。これはこれまで得られていた性能を凌駕する結果である。また、本結果の検証により、アップコンバータおよびダウンコンバータ素子として動作する両SISミキサが各々利得を有し、低雑音に動作していることがわかった。 一方、さらなる高性能化のためには、入出力のインピーダンス整合が鍵となることも判明した。そこで、増幅器の入出力インピーダンスが50Ω系に整合するように高臨界電流密度接合を用いた100 GHz帯SISミキサを再設計した。回路シミュレーションでは、DCから約10 GHzまで-10dB以下の反射係数を確保し、平坦な特性を得られることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではSIS接合を用いたアップコンバータおよびダウンコンバータによる新しい構成の増幅器の開発を目指したものである。本研究期間内に下記を計画している。増幅器の理論構築および実験系構築を進め、マイクロ波基本特性の理解を進める。また、増幅器の性能最適化により、高利得かつ低雑音広帯域化を進め、既存増幅器との特性比較により本増幅器の有用性を見出す。これらを実行するため、①試作機設計・デバイス試作、②評価系構築と性能評価・特性解析の2つに分け、研究を進めている。本年度は、本研究における最も重要な目的の一つである増幅器を構成し、特性評価を実施した。その結果、これまでの性能を凌駕し、冷却型半導体増幅器と同等に近い性能まで得ることに成功している。また、次の試作に向けた再設計を完了したことから、さらなる性能向上が期待される。したがって、比較的順調に研究が進展していると考えている。 以上の進捗は、国内研究会で複数件発表するとともに、国際会議SPIEにおいても論文発表した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに進めてきた検討の結果、利得に加えて雑音温度や線形性等の性能指数を測定し、冷却型半導体増幅器と同等に近い性能まで得ることに成功している。今後は、増幅器を構成するアップコンバータおよびダウンコンバータ素子をさらに高性能化させ、増幅器性能の向上と実用に向けた課題抽出を進める。そのために、昨年度より進めてきたSISミキサの新規回路設計に基づき、製作・評価を繰り返し実施し、個別回路の最適化を本年度も継続する。また、SISミキサの回路素子をオンウエハ上で評価できるように回路設計および実験系構築を進めてきた。本年度もこれらの評価手法を用いて要素回路の詳細解析を進めるとともに、回路設計にフィードバックすることで設計精度の向上を目指す。昨年度に引き続き国内外の研究会において適宜発表し、当増幅器の認知度を高めるとともに、実用化に向けた課題について研究者と議論する。また、以上の結果をまとめ、論文として投稿することを目指す。
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