研究課題/領域番号 |
19H02209
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
久田 真 東北大学, 工学研究科, 教授 (80238295)
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研究分担者 |
皆川 浩 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10431537)
宮本 慎太郎 東北大学, 工学研究科, 助教 (60709723)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セメントクリンカー / フライアッシュ / 水和熱 / 初期強度 / アルカリ骨材反応 |
研究実績の概要 |
セメント産業では廃棄物受け入れ量を維持するための方策としてセメントの中間生成物であるセメントクリンカーの骨材としての使用を検討している.これまでの研究では,セメントクリンカー細骨材(以下,クリンカー細骨材)が圧縮強度の増加や塩化物イオンの実効拡散係数の低減に寄与することなど,いくつかの知見が報告されている.ただし,クリンカー細骨材の使用により,アルカリシリカ反応(ASR)に影響を及ぼすアルカリ量の増加や温度ひび割れなどに影響を及ぼす水和熱の増加といったデメリットも想定される.他方で,混和材の一つであるフライアッシュ(FA)はセメントに置換することでASR や水和熱は抑制できるが,初期強度の低下や凝結の遅延が生じることが想定される. 以上を踏まえて,本年度はクリンカー細骨材とFAの両者が有するデメリットを両者の併用によって相互補完する可能性を期待して,両者を併用したモルタルの水和発熱特性と初期強度発現性,ASRによる膨張特性について検討した.その結果,モルタルの発熱性状と初期強度発現性について,FAとクリンカー細骨材を併用することで互いのデメリットを補完することができ,両者の併用がこれらの性能にもたらす効能は非常に大きいことを見出した.なお,ASRによる膨張については,クリンカー細骨材の使用により膨張量は抑制できる傾向にあるものの, FAとの併用による膨張抑制の寄与についてはクリンカー細骨材を使用していないものと比較して小さくなることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はクリンカー細骨材と混和材の一つであるフライアッシュを併用することでフライアッシュが有するデメリットである初期強度発現性の低下とクリンカー細骨材のデメリットである水和に伴う温度上昇の両方を打ち消すことができることを明らかにした.この点は非常に新規性を有した結果であり,今後の当該研究の発展につながるため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,継続してフライアッシュとクリンカー細骨材の併用に関する研究を継続しながら,クリンカー細骨材という全く新しい建設材料を使用したときのコンクリートの長期安定性についても検討していく予定である. フライアッシュとクリンカー細骨材の併用については,現状ではフライアッシュをセメントに対して30%までしか置換していなかったが,それ以上の置換率についても検討して,副産物の利用の促進につなげていくことを考えている. クリンカー細骨材を使用した際の長期安定性については,これまでに作製した当該材料を使用したコンクリートに対して各種分析を実施し,危険性が生じていないかなどを判定していく予定である.
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