研究課題/領域番号 |
19H02214
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 貴士 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70335199)
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研究分担者 |
三浦 泰人 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10718688)
上田 尚史 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (20422785)
高谷 哲 京都大学, 工学研究科, 助教 (40554209)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ASR / 反応性 / 反応生成物 / 残存膨張量 / ラマン分光法 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,迅速かつ簡易に測定できる手法としてラマン分光法に着目し,骨材の反応性や残存膨張量を評価する手法の確立を目的としている. 2019年度には,骨材のシリカの溶出前後でのラマンスペクトルの変化および溶出しやすい骨材の特徴,反応生成物に与えるNa+およびCa2+の影響について検討を行った. その結果,骨材の溶出に伴い,ラマンスペクトル上で低波数側(入射光785nm)の蛍光が減少することが確認され,低波数側の蛍光が溶出しやすい骨材の特徴である可能性が示された.また,この蛍光はSiO2の欠陥に起因するものであることも分かってきた.ただし,Alなど骨材に含まれる微量元素の含有量が溶出試験後に増加していることも確認され,AlがSiO2中のSiと同系置換することで溶出を抑える働きがある可能性もあると考えられる.したがって,骨材の溶出のしやすさには微量元素の影響も無視できない可能性がある. 反応生成物については,Na2O/SO2比により異なることが明らかとなり,Na2O/SO2比が大きい糸Ca2+を取込みにくくゲル化しにくいが,Na2O/SiO2比が小さくなるとCa2+を取込んでゲル化することが分かってきた.一方でCa2+量は反応生成物に大きな影響は見られず,一般的なコンクリートに含まれるCa2+量では反応生成物の組成に違いは生じないものと考えられる. 一方で,ASR反応性骨材とは考えられない,石英を主成分とする標準砂の溶出量が安山岩よりも大きいことが確認され,溶出しやすい骨材がいわゆる反応性骨材とは限らない(溶出しやすい骨材と膨張する骨材が異なる)可能性や,反応生成物が吸水膨張しない可能性も示唆された. 膨張機構解明に向けては,X線CTによって得られたひび割れ性状と相互比較して,力学的に膨張相を特定するために,3D-RBSMにおいて骨材の膨張相の違いを表現する解析モデルを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では想定していなかった結果も出てはいるが,2019年度に予定していた試験は概ね実施することができたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
ASRにおいてシリカの溶出しやすい骨材と膨張しやすい骨材が異なる可能性が示されたことから,膨張機構を含めたASRのメカニズムについても検討する必要性が出てきた.そのため,今後は反応生成物の役割や膨張機構を明確にするために,様々な骨材を用いたモルタルの促進膨張試験を行い,反応前後でのX線CT撮影を行い比較することとにより生成物がどのような役割を果たしているか,膨張やひび割れがどのように生じているかなどについて検討する.3D-RBSMによるひび割れ解析と合わせて膨張機構の解明を目指すこととする.また,骨材の反応性をより明らかにするために,骨材に含まれる微量元素の量が溶出前後でどう変化するかについても検討を行う.さらに,実構造物から採取したコアやドリル削孔粉末についても分析を行い,骨材の反応性と構造物の置かれている環境が生成物に与える影響についても検討することとする.骨材の反応性や溶出性に対する理解が深まれば,ASRを起こしやすい骨材の特徴を明確にすることができると考えている.また反応生成物については実験室レベルでは明らかになりつつあるが,実構造物の調査を行うことで実環境から生じているであろう反応生成物を予測することが可能になると考えている.これらの知見を元に,反応生成物量と膨張量の関係について検討していくこととする.
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