研究課題/領域番号 |
19H02217
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
大内 雅博 高知工科大学, システム工学群, 教授 (80301125)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自己充填コンクリート / 粘着力 / 増粘剤 / 面内粘着力 / 面内粘着力 / フレッシュモルタルのせん断強度 |
研究実績の概要 |
フレッシュコンクリートの自己充填性を支配する要因としてフレッシュモルタルの粗骨材との粘着力に着目し,その測定法を構築した。粘着力には,対象とする面に対して鉛直方向の「面外粘着力」と,水平方向の「面内粘着力」の2種類がある。 面外粘着力の測定には,直応力無しの状態で面外粘着力を測定可能とする万能物性試験機を用いた。すでにフレッシュコンクリートにおいて自己充填性向上効果を確認している,複数種類の増粘剤を添加したフレッシュモルタルの粘着力を測定し,その増進効果を調べた。しかしながら,コンクリートの自己充填性レベルの差異ほどモルタルの面外粘着力の値には差が見られなかった。フレッシュコンクリートの間隙通過際に生じる粗骨材とモルタルとの間の相対変位が,主として「面内せん断力」によるものであり,面外粘着力は自己充填性の主たる支配要因たりえないからであると考察した。 面内方向粘着力の測定法確立のために,既存の粘度測定法を再検討した。汎用測定機による粘度には粘着力の影響が含まれている可能性があるからである。フレッシュモルタルの粘度の理解のために,フレッシュモルタルの一面せん断試験による「直応力下でのフレッシュモルタルのせん断強度」の,粘着力とは独立した測定法を確立した。これまで,模擬粗骨材としてのガラスビーズ混入によるフレッシュモルタルのロート流下速度低下率を指標とした間接測定に留まっていたものを,一面せん断試験により直接測定することを可能とする試験法である。これにより,配合上の固体粒子の質と量のみが左右していると想定されてきたフレッシュモルタルの直応力下でのせん断強度が,使用する化学混和剤の種類と量によっても左右されることを明らかにした。そして,これがフレッシュモルタルの粘度をも左右している可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においてフレッシュモルタル相の粘着力測定法の構築を完成させる予定であった。粘着力の方向には二種類あり,それらのうち,フレッシュコンクリートの自己充填性の主たる支配要因は面内粘着力の方である可能性を得た。当該年度中に面内粘着力の測定方法が完成しなかったため,その点では当初計画よりも遅れたと言える。 しかしながら,すでに面内粘着力測定の方法の構築の目途が立っている。さらに,新たに開発した一面せん断試験の結果より化学混和剤添加による固体粒子間摩擦ひいては粘度への影響の大きさが明らかになったことから,粘着力の粘度からの独立定量化の目処が立ったことが,当初予定していなかった今後の研究の進展の一助となり得ることから,上記の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染防止対策の一環として大学における実験室使用が禁止されているため,2020年5月18日現在,予定していた実験が出来ない状況である。実験室が使用可能となっても,作業に人数を要するコンクリート試験は密集状態を生じさせるものであるため,慎重に行う必要がある。高知工科大学実験室においてはモルタル試験を主体とし,コンクリート試験が必要な場合には安全に配慮して必要最小限とするか,コンクリート練混ぜの機械化が進んでいる生コンクリート工場に委託する等の措置を講ずることとする。
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